研究課題/領域番号 |
23K06741
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河合 洋平 京都大学, iPS細胞研究所, 特定助教 (90623364)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | iPS細胞 / ヘルパーT細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヘルパーT細胞の各分化段階の状態を網羅的に解析することで、分化段階を規定する必要十分因子を抽出し、高機能性ヘルパーT細胞の作製法の樹立を目的としている。具体的にはiPS細胞からのヘルパーT細胞を前例のないフィーダーフリー条件下にて作製する事を目指している。 本年度ではCD4/CD8-DPステージからCD4-SPステージに至る分化培養系を集中的に検討した。TCRシグナルとNotchシグナルをそれぞれ最適化することにより、フィーダーフリー条件でCD4-SP T細胞を作製する事に成功した。single cell RAN-seq (scRNA-seq)解析の結果、CD4-SP T細胞はヘルパーT細胞のマスター転写因子として知られるThpokをはじめ、多くのヘルパーT細胞関連分子を発現している事が明らかとなった。機能的には、CD4-SP T細胞がCD40Lを高発現し、樹状細胞の成熟やIL-12産生を誘導する事を確認した。 さらに臨床応用に適合したフィーダーフリー条件でCD4-SP T細胞を増幅したところ、活性化後にヘルパー機能に加えて細胞傷害活性も獲得する事が明らかとなった。その結果、ヒトがん細胞を用いた異種移植がんモデルにおいて、CD4-SP iPS-T細胞はキラーT細胞の共移植なしに単独で、高いvivo抗腫瘍効果を示す事が明らかとなった。 完全フィーダーフリー条件で作製したCD4-SP iPS-T細胞はHLAクラスII依存的なキラーかつヘルパーとして、有力な抗腫瘍性細胞製剤になり得る事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞分化培養系の最適化だけでなく、T細胞産物の網羅的評価、vitro, vivoにおける機能評価がいずれも着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現状iPS細胞由来ヘルパーT細胞の作製効率は学術的な研究としてまとめるには十分であるが、臨床応用には十分ではない。臨床応用では質にばらつきのあるiPS細胞から安定して高効率にT細胞を作製する必要がある。scRNA-seqの結果から、ヘルパーT細胞を得る上で有望な分子経路をいくつか同定した。今後はそれらの有用性を検討して、さらなるヘルパーT細胞分化系の最適化につなげていきたい。
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