研究課題/領域番号 |
23K06745
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
福田 正裕 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 客員研究員 (60802113)
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研究分担者 |
石本 崇胤 公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 部長 (00594889)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 光学的リーサリティ / CAFs / LNP / 胃癌 |
研究実績の概要 |
申請時の計画では、Adeno Associate Virus (AAV)を用いてFAP (Fibroblast activation protein-α) 陽性Cancer Associated Fibroblasts (CAFs)をターゲットとして光毒性を生じさせる蛍光タンパク質SuperNovaを導入し、細胞種特異的光学的リーサリティを引き起こし通常のfibroblastには影響を与えずにCAFsを選択的に除去することにより、腫瘍間質リモデリングを生じさせる予定であった。 しかし共同研究者の異動後の研究施設の規制上、AAVを用いて実験することが難しいため、我々はウイルスベクターを用いた遺伝子導入実験の代わりにCAFsを選択的にターゲットとする脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticles; LNPs)を作成することとした。LNPsは脂質二重膜にmRNAやプラスミド、タンパク質など様々な内容物を搭載することが可能であり、ウイルスベクターの代替として最適な手段と考えた。 単純脂質二重膜LNPsはウイルスとは異なりターゲット特異性を持たない。そこでFAP陽性細胞に選択的に取り込ませることを目的とした抗体修飾ナノ粒子を作製するため、KAIST (Korea Advanced Institute of Science and Technology)のDr. JiHo Parkと共同研究を行っている。FAP 抗体を結合させたLNPs (FAP-LNPs)がCAFsに選択的に取り込まれることを確認するため、(1) HEK293T細胞にFAPが安定的に発現するよう遺伝子改変細胞を作製し、(2) mCherry mRNAを内包するLNPを作成し、取り込み実験を行った。FAP-LNPsは通常のHEK293T細胞には取り込まれないが、FAPを安定的に発現するHEK293T細胞にのみ特異的に取り込みされ、mCherryが発現することを確認している。 現在、FAP-LNPsが(1) FAP陰性fibroblastには取り込まれないこと、(2) マウス胃がん細胞とマウスの胃から樹立した線維芽細胞の直接共培養下で、同様に線維芽細胞特異的に取り込まれるか(がん細胞に影響しないか)の確認実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画ではAAVを用いて選択的にCAFsに光毒性タンパク質を導入し光学的リーサリティを生じさせる計画であった。しかし施設の規制上AAVが使用できないため、CAFsのみをターゲットとした遺伝子導入方法を開発する必要が生じた。そこでまずはKAISTのDr. JiHo Parkとの共同研究により、FAP陽性CAFs選択的に遺伝子導入を可能とするLNPs (FAP-LNPs)を開発した。In vitroではFAP-LNPsのFAP陽性細胞への選択的取り込みは確認できたため、今後は、マウスの胃壁へ胃がん細胞を同所移植し、生体レベルにおいても腫瘍内の線維芽細胞へ取り込まれるか検証を行う。
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今後の研究の推進方策 |
FAP-LNPsがin vivoにおいても機能することを確認したのち、FAP-LNPsを用いてCAFs選択的に光学的リーサリティ(OL)タンパク質を誘導する。FAP陽性細胞を選択することはLNPs自体でできているため、FAP promoterを用いる必要が無いためα-SMAなど他のプロモーターを組み合わせてCAFsターゲッティング特異性を上げることができると考えている。 「光学的リーサリティ」を用いてCAFsを直接除去することで腫瘍間質リモデリングを誘導し、「CAFsをターゲットとした治療が、実際に癌細胞の血管内浸潤ひいては血行性転移を抑制することにつながるのか?」という課題を直接検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験に遅れが出ており、一部次年度に実施することとしたため想定より研究費を執行することがなかった。2024年度に合算して使用する見込み。
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