研究課題/領域番号 |
23K06747
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研究機関 | 愛媛県立医療技術大学 |
研究代表者 |
山田 武司 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (40333554)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CD8 / エピジェネティック調節 / 抗腫瘍活性 |
研究実績の概要 |
我々の先行研究から、ヒストンH3K27脱メチル化酵素であるUtxがT細胞の分化や機能を調節することが明らかとなっている。したがって、ヒストンH3K9脱メチル化酵素であるPhf2においても、T細胞の分化や機能との関連が示唆される。そこで本研究では、T細胞におけるPhf2の役割に焦点を当てた解析を開始した。 今年度は、解析に使用するT細胞特異的Phf2欠損マウスモデルの作製を行った。Phf2欠損マウスはPhf2 floxマウスとCD4 Creマウスを交配させることでT細胞特異的Phf2欠損マウスを作製した。T細胞におけるPhf2遺伝子の欠損をPCR解析により確認したとともに、ウェスタンブロット解析により、Phf2の蛋白発現がないことも確認した。野生型(WT)マウスとT細胞特異的Phf2欠損(Phf2 KO)マウスとの比較から、体重差や健康状態に差が見られないことを観察した。また、胸腺細胞を用いた解析から、Phf2遺伝子が欠損するT細胞胸腺分化後のCD4あるいはCD8単独陽性の割合も差が見られないことから、Phf2遺伝子欠損による胸腺分化には異常が見られないことが分かった。次に、様々な臓器(脾臓、血液、リンパ節、肝臓、肺)に分布するCD8陽性T細胞の分化を抗体染色後にフローサイトメトリー解析したところ、興味深いことにPhf2欠損によりCD44とCD62Lが高発現するメモリータイプの割合が増加していることが明らかとなった。一方で、各臓器におけるCD8陽性T細胞の数には差がなかったことから、数の恒常性は維持されていることも分かった。以上のことから、Phf2欠損によりCD8陽性T細胞が何らかの刺激を受けて活性化し、分化が進んだものと考えられる。今後は、活性化後のT細胞の増殖や分化、機能について細胞レベルだけでなく個体レベルで解析し、T細胞免疫応答におけるPhf2の役割を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Phf2欠損マウスモデルの作製に関して、Phf2 floxマウスおよびCD4 Creマウスはすでに入手済みであったため、交配により予定通りT細胞特異的Phf2欠損マウスができたため、期待通りの研究成果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を踏まえ、活性化後のT細胞の増殖や分化、機能について細胞レベルだけでなく個体レベルで解析し、T細胞免疫応答におけるPhf2の役割を明らかにしていく。まず、個体レベルの解析では脾臓から分離培養したCD8陽性T細胞を、抗CD3/CD28抗体を用いて4日間培養を行い、T細胞分化と増殖についてフローサイトメトリー法により解析する。個体レベルの解析では、マウス胸腺腫瘍細胞であるE.G7を皮内接種し、腫瘍サイズの測定による抗腫瘍活性の比較を行う予定である。これらによって、T細胞の抗腫瘍免疫応答におけるPhf2の役割を明らかにし、最終的に臨床応用に向けた新しい免疫療法のプロトコール提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた機器の購入がメーカー在庫なしの状態で購入できず、繰越し金が生じた。次年度に購入予定とした。
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