研究実績の概要 |
術中蛍光診断薬5-アミノレブリン酸(ALA)を、代謝変換スイッチを目的としたミトコンドリア標的薬への応用を証明するために、グリオーマ細胞株(9L, T98G, U251)および悪性リンパ腫細胞株(Raji, TK, HKBML)を用いて検証した。われわれは、腫瘍細胞がホメオスタシス維持のため、外因的に投与された5-ALAを代謝する際に生じる活性酸素種(ROS)に対し、自身のROS消去能を誘導するが、消去能力が限界(飽和状態)に達したときに、ROS産生を低下させるため、電子伝達系を作動させないようにすることで、ヘム合成系が停止し、結果としてPpIXを細胞内のミトコンドリアに蓄積すると仮説を立てた。一方、中枢神経原発悪性リンパ腫に対する化学療法剤として使用されるメトトレキサート(MTX)であるが、葉酸代謝阻害剤であり、ROS消去能力を低下させることが知られている。したがって、5-ALAで処理をした腫瘍細胞は、ROS消去能力が限界に達しており、その状況においてMTXで処理をすることで、ROSの致死的レベルの閾値を下げることができると推測した。今回、1 mM 5-ALAによる前処理(4時間培養)を行い、MTXを各濃度(0-1 mg/l)で溶解した細胞培養液で48時間培養を行った。生細胞率を、細胞増殖/細胞毒性アッセイキット(Cell Counting Kit-8: CCK-8)による吸光度で測定した。いずれの細胞においても、MTX濃度依存性に生細胞率は減少した。5-ALA処理群においては、生細胞率が減少するもの不安定であった。5-ALA未処理群と比較し、5-ALA処理群においては、MTXによる殺細胞効果は強い傾向があったものの有意差は認めなかった。
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