研究課題/領域番号 |
23K06778
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
吉田 崇 関西医科大学, 医学部, 助教 (00714966)
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研究分担者 |
大江 知里 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40469242)
松浦 徹 関西医科大学, 医学部, 講師 (60415297)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | オルガノイド |
研究実績の概要 |
2023年度内で、腎摘除・腎部分切除・腎腫瘍生検検体を行った患者13人に当研究の同意頂き、オルガノイド培養を開始した。Air Liquid Interface(ALI)を用いた腫瘍関連免疫細胞の共培養と並行し、ALI培養系がうまく確立できなかった場合のために末梢血単核細胞(PBMC :Peripheral Blood Mononuclear Cells)の採取及び通常のオルガノイド培養も行っている。腫瘍採取は肉眼的に典型的なclearな部位(Golden yellowな腫瘍)とEosinophilicが疑われる部位(灰白色な腫瘍)を中心に採取した。採取した組織の一部をオルガノイド培養、残組織をflow cytometry(FCM)でCD4・CD3・CD56で免疫環境の状況を観察し、病理診断で使用するHematoxylin and Eosin(HE)染色での組織形態との相関性を検討した。我々の既出のHE染色での色調差の免疫環境の検討と同様で、フローサイトメトリーでもEosinophilicな腫瘍の方がclearな腫瘍よりも腫瘍関連免疫細胞は多く検出された。ALI培養開始と同時にNivolumabを培地内に添加、1週間後にFCMを行った。免疫環境は組織と同様の抗体を使用し免疫環境の変化を評価、腫瘍細胞の変化は7-Amino-ActinomycinD (7ADD)・Epithelial Cell Adhesion Molecule (EpCAM)を使用し評価を行った。Nivolumab投与にて腫瘍免疫細胞の割合は、Nivolumab非投与群より増加していた。腫瘍細胞の変化は、7ADD・EpCAMともに大きな変化がない症例を多く認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HE染色の色調変化毎の腎癌オルガノイド培養に順次成功しておりおおむね順調に進展していると判断している。Nivolumab投与にて腫瘍細胞の変化に大きな変化がない症例が多かったのは腎部分切除検体でのオルガノイド作成例が多く、悪性度の低いclearな細胞採取が多かったため腫瘍がNivolumab抵抗性であったことに起因すると考える。Eosinophilicのオルガノイド培養症例を増やしさらなる検討を行う予定である。また、FCMで採取できた細胞障害性T細胞(CD8陽性細胞)はEosinophilicの症例でも予想より少ない印象であった。ALIを使用した腫瘍関連免疫細胞の共培養だけでなくPBMC使用したT細胞共培養系も順次検討し、両培養系の免疫細胞の差異や腫瘍細胞の変化等含め検討を予定している。FCMで腫瘍免疫細胞の差異が確認と並行し、reverse transcription- quantitative polymerase chain reactionを行いINFγ, GranzymeB, Perforin1などを定量化し遺伝子学的な腫瘍免疫環境の変化も検討予定である。
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今後の研究の推進方策 |
並行して行っている通常のオルガノイド培養系では通常のコラゲナーゼ処理ではオルガノイド培養が確立できない症例がみられた。オルガノイド確立ができなかった症例の病理標本を確認するとISUP gradeが低いなど、悪性度の低い腫瘍でオルガノイド培養が確立できない傾向にあった。現在は酵素処理を変更することで悪性度の低い腫瘍でもオルガノイド培養の確立に成功し、確立したオルガノイドでHE染色を行い、clear cell renal cell carcinomaであることを確認している。今回使用した酵素ではオルガノイドの発育が、通常のコラゲナーゼ処理より良好な傾向にあった。PBMCを使用したT細胞共培養での検討に有用な可能性もありこちらも並行して検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
オルガノイド樹立状況次第ではRT-qPCRやRNA-Seqを検討していたがオルガノイド樹立状況を勘案し実施していない。2024年度以降に遺伝子解析を順次進める予定である。学会発表・論文投稿に至るまでの成果となっていないため、旅費・その他に関しては経費計上していない。本研究の成果発表・論文化を2024年度以降に行う予定である。
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