研究課題
日本人地域高齢住民において網膜症と認知症発症との関連を検討した。2007年の久山町健診を受診した60歳以上の男女のうち、眼底写真が得られた1,709名を2017年まで追跡した。網膜症は眼底写真からModified Airlie House Classificationに従って判定し、網膜所見別では網膜毛細血管瘤および網膜出血に区分した。認知症はDSM-ⅢRの基準で診断した。網膜症を有する認知症発症リスクを、コックス比例ハザードモデルを用いて算出した。年齢、性、学歴、高血圧、糖尿病、総コレステロール、body mass index、脳卒中既往歴、喫煙、飲酒、運動習慣を共変量として用いた。追跡期間中に374名が認知症を発症した。認知症の粗発症率は、非網膜症群と比較し、網膜症群で有意に増加した(p=0.01)。網膜症群における認知症発症リスクは、非網膜症群と比べ有意に上昇した(多変量調整後:ハザード比 1.64、95%信頼区間 1.19-2.25、p<0.01)。網膜所見別の検討では、網膜毛細血管瘤を有する者は、網膜毛細血管瘤を有さない者と比較し認知症発症リスクが有意に上昇した(ハザード比 1.94、95%信頼区間 1.37-2.74、p<0.01)。わが国の地域高齢住民において、網膜症を有するものは認知症発症リスクが上昇することを明らかにした。網膜症の評価は、簡便で非侵襲的な眼底撮影検査から得られるため、認知症のハイリスク群の早期発見に有用であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
なし
65 歳以上の久山町住民2 500 名を対象に今回構築した眼底カメラを撮影するとともに、認知機能検査を含む包括的調査を実施中である。その結果を用いて、認知症診断に関わる眼パラメータを検討し、認知症診断のスクリーニング法としての有用性について検討中である。
次年度に繰り越した研究があったため。
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