研究課題/領域番号 |
23K06812
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
長谷川 実奈美 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00778764)
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研究分担者 |
岡野 ジェイムス洋尚 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90338020)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ALS / TDP-43 / スプライスバリアント |
研究実績の概要 |
これまでの本研究において、3つのALS関連RBPグループ(Ⅰ. ALSの原因遺伝子、Ⅱ. 神経特異的RBP、Ⅲ. Ⅰ以外でALS病態との関連が示唆されるRBP)には、TDP-43の選択的スプライシングに影響しドミナントネガティブスプライスバリアント(ドミネガsv)の産生を制御するものが複数含まれていることがわかっている。令和5年度は、これらALS関連RBPによるTDP-43の選択的スプライシング制御がドミネガsv翻訳産物の発現にも影響することがわかった。さらに、これらのTDP-43制御RBPsは相互の発現誘導や機能的阻害を介した2重のネガティブフィードバック機構によりTDP-43の活性を制御することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、ALS関連RBPによるTDP-43の選択的スプライシング制御がドミネガsvの発現にも影響することを見出した。我々が以前作製したドミネガsv特異的抗体を用いた解析により、hnRNP Kがドミネガsvの発現を誘導する一方でhnRNP A1はその発現を抑制することがわかった。また、hnRNP KはhnRNP A1の発現を著しく誘導したがその逆は影響が見られなかった。hnRNP KとhnRNP A1の共発現実験により、hnRNP Kによるドミネガsvへのスプライシングおよび発現誘導がhnRNP A1により抑制され、両者は機能的に阻害関係にあることが示唆された。これらのことから、hnRNP Kによるドミネガsvの発現誘導を介したTDP-43活性抑制機構に加え、hnRNP Kの過活性をhnRNP A1が抑制してTDP-43過抑制を制御する2つのネガティブフィードバック機構の存在が示唆された。本機構はTDP-43の厳密な発現および機能維持機構の一端を担うと考えられ、その破綻がALSで見られるTDP-43の異常に繋がることが推察される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は運動ニューロン特異的なRBP調節ネットワーク機構解明の為、令和5年度に明らかとなった2重のネガティブフィードバック機構と神経特異的RBPsとの関連に着目し研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和6年度も引き続きiPS細胞より分化誘導したニューロンを用いた実験などの高価な試薬を使用する実験を多く予定しており、その経費が必要である。また、論文投稿および学会における成果発表を予定している為、一部の直接経費を次年度の経費とした。
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