研究課題
緑内障は視神経軸索が障害を受け、その細胞体である網膜神経節細胞(RGC)が死に至ることで、視野障害が起きる神経変性疾患である。近年ではRGC死よりも前に、軸索終末や樹状突起の退縮が起こり、神経回路が切断されることが発症原因とも考えられている。従って、軸索と樹状突起を再生させ、神経回路を再構築すれば、一度低下した視機能が回復する可能性が推察される。本研究では視神経挫滅モデルを用いてTrkBシグナル増強による軸索および樹状突起の保護・再生のメカニズムを追求した。TrkBシグナルの下流ではDOCK3分子が活性化することで、細胞骨格であるアクチンの重合が促進されて軸索再生を促進することが明らかとなっている。そこで、本研究では、DOCK3を活性化する小分子化合物を探索して、治療薬としての有効性を検討した。DOCK3はElmoと結合することにより、活性化レベルが増大することから、DOCk3-Elmoの結合を促進する化合物の検索を行った。46万化合物からスクリーニングを開始して、in vitroにおける培養細胞の神経突起伸長促進などを指標にして1分子まで絞り込んだ。さらに、この分子構造を基本骨格として、20種以上の新たな分子を合成し、さらなる神経突起伸長促進効果の増幅を目指した。新たに展開した合成分子をin vitroでスクリーニングして4化合物まで絞り込み、これらの分子がマウス視神経挫滅モデルにおいて神経保護および軸索再生を促進することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
TrkB下流で機能するDOCK3活性剤の開発も順調に進み、TrkBシグナルによる軸索再生の分子機序が明らかになりつつあるため。
インスリン受容体などのTrkB分子以外の栄養因子受容体を活性化することで、網膜神経節細胞の保護、再生を誘導し、緑内障治療開発への新たな展開を探る。
試薬や消耗品の節約に努めたため。差額は次年度に使用予定のAAV作製費用等に活用予定である。
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