研究課題/領域番号 |
23K06856
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
相崎 良美 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (30458525)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 成人発症スチル病 |
研究実績の概要 |
成人発症スチル病(Adult-onset Still’s disease:AOSD)は弛張熱、典型的皮疹(サーモピンク疹)、関節炎を有する原因不明の全身性炎症性疾患であり、国の指定難病である。有用な診断マーカーが無いうえ、臨床像には非特異的なものが多く、診断や治療に苦慮する事がある。 本研究では、AOSDにおけるサイトカインプロファイルと免疫細胞の関係に焦点を当て、炎症の惹起・制御機構を解析し、AOSDの病態を解明することを目的としている。 AOSD患者の血清中サイトカインプロファイリングを行い、健常人と比較して有意に高値であったサイトカインにてNK細胞、単球を刺激することで、免疫細胞の作用を確認した。 AOSD患者の血清中IL-6およびIL-18が健常人と比較して有意に高値であり、IL-10も増加傾向を示した。IFN-γ産生細胞である健常人末梢血のNK細胞にIL-10とIL-18刺激を加えると、IL-6刺激の有無に関係なくIFN-γの誘導が確認された。一方、健常人末梢血の単球では、IFN-γとIL-6刺激によって炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-6, TNF-α)が上昇し、IL-10添加により抑制されることを明らかにした。 単球細胞とNK細胞に対するIL-10の一見すると相対するような異なる作用が、AOSDの病態を複雑にしている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常人のNK細胞と単球細胞を用いた検証であり、AOSDの病態解明を進めるにはAOSD患者検体で検証する必要がある。しかしながら、AOSD患者の末梢血細胞での検証が行えていない為、当初の計画よりやや遅れている。新型コロナウィルス感染対策の為、患者リクルートが困難であった。さらに、治療開始前の活動期AOSD患者検体での検証を検討していたが、当院に入院・転院してきた際にはすでに治療開始している症例が多かった。次年度は、治療強化前の症例での検証も加え、症例を増やす予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
AOSD患者の単球細胞発現解析として、トランスクリプトーム解析を行う予定であるが、健常人単球細胞の回収のみ完了している。2024年度以降は、AOSD患者の回収を予定している。 加えて、AOSD 患者の単球とNK 細胞におけるIL-10 の作用の確認、サイトカインと免疫細胞による炎症制御機構を明らかにする。 活動期のAOSD症例は、未治療に限定せずに再燃による治療強化前の症例も加えることで、症例数を増やすことが可能である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
成人発症スチル病患者のリクルートが十分ではなく、研究が次年度にずれ込み、その費用を次年度に行う計画としたため。
|