研究課題/領域番号 |
23K06861
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
惠 淑萍 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (90337030)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 糖尿病腎症 / 脂質蓄積 |
研究実績の概要 |
糖尿病性腎症患者の腎生検組織では、脂肪滴の蓄積と脂質代謝関連遺伝子の発現異常が報告されたが尿中の脂質はこれまで特に注目されていなかった。尿は侵襲性が無く大量に採取可能なため、慢性腎臓病の検査材料として適している。令和5年度は尿中の脂質と腎疾患との関連性を調査するため、先行研究で開発した血中コレステリルエステル定量用の液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)法の改良を行った。
まず、当研究室で合成した重水素標識コレステロールとオレイン酸及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)を無水ジクロロメタンに溶解し、室温で1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を縮合剤として室温で反応させた。次いでその生成物を酢酸エチルで抽出した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して重水素標識コレステリルオレアートを得た。同様に重水素標識cholesteryl linoleateなど他3種類も合成できた。合成した標識体は核磁気共鳴および高分解能質量分析(LTQ-Orbitrap)にて構造を確認した。次は、これら重水素標識コレステリルエステルを内標準物質物質として、大気圧化学イオン化 (APCI)を選択し、陽イオンモードで定量分析法の改良を行った。検量線はそれぞれ2-200 nmol/mLの範囲で良好な直線性(r2≧0.998)が得られた。また回収率は0.9-1.1の範囲内、変動係数は6%以下を良好とした。今後は本法を利用して検体中の脂質定量を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当ラボでは、内標準物質として重水素標識のコレステリルエステルの化学合成法が既に確立されており、尿中脂質測定用のLC/MS法の改良が順調に進展できた。
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今後の研究の推進方策 |
確立したコレステリルエステルの液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)定量法を用いて、慢性腎臓病患者の尿中脂質や細胞中の脂質を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、発注した試薬や部品が納品できなかったことは、助成金の執行に影響をもたらした。次年度は、試薬や部品の注文先を再考したうえ対応する。
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