研究実績の概要 |
小腸癌は稀な疾患であり、消化管腫瘍全体の約3%を占め、全癌の約0.5%を占める。小腸癌はその稀少性と症状や徴候が非特異的であることからしばしば早期の診断は困難である。通常の内視鏡での小腸観察は困難であり、深部小腸の精査には高価なカプセル内視鏡検査や負担の大きいダブルバルーン内視鏡を必要とする現状がある。そのため、診断時ステージがIII期26%、IV期32%と進行した段階になるまで診断されず、更にはIII期およびIV期の5年疾患特異的生存率はそれぞれ35%、4%と予後不良の疾患の一つと考えられている(Cancer. 1999 ;86, 2693-706)。そこで小腸癌に対する新たな診断・治療アプローチが必要である。例えば簡便かつ有用な早期診断が可能な診断マーカー、予後や抗癌剤への反応性を予測するマーカー、抗腫瘍効果をもつ分子の開発である。現在小腸腺腫・早期小腸癌におけるmiRNAの報告は皆無であり、miR-650を始めとするこれらmiRNAが腫瘍の増殖・浸潤に関する重要な役割を果たしていることが推測され、この関連が解明されれば新規性のある報告となる。今回7人の内視鏡切除された十二指腸腺腫・早期腺癌の腫瘍部と非腫瘍部より組織採取をおこない、組織中のmiRNAの抽出を行った。その関連するmiRNAについてアレイチップを用いて網羅的に解析したところ、異なったクラスターを形成することを確認した。腫瘍部で14分子(優位順にmiR-203a-3p,miR-135b-5p)の有意な増加、14分子(優位順にmiR-650,miR-7-5p)の有意な減少を検出した。これらmiRNAが小腸腫瘍の増殖、進展に関与している可能性があり、またバイオマーカーとしてのポテンシャルを持っていると考える。
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