研究実績の概要 |
心不全において腹部超音波検査などを用いて、肝臓・腎臓・脾臓・腸管におけるうっ血および低潅流の有無、栄養状態、ヘパトカイン、腸内細菌叢と予後の関係に関して、以下のような検討を継続し、順次公表を進めております。 ①腹部超音波装置を用いた肝臓内部の血行動態評価の意義に関する検討:腹部超音波検査を用いてhepatic venous stasis index (HVSI) を評価した。HVSIは右心カテにおける肝うっ血や右心負荷所見を反映し、心不全患者の予後と関係していることが示唆された。(J Am Heart Assoc. 2023: e29857) ②心不全患者における脾臓の超音波エラストグラフィの予後的意義:心臓-脾臓連関の役割。心臓と脾臓との連関の意義は十分に明らかになっていない。超音波エラストグラフィは、非侵襲的に臓器組織の質を定量化できる技術です。232名の心不全患者を対象に腹部超音波検査を行い、脾臓のshear wave elastography(SWE)とshear wave dispersion(SWD)を定量化して、組織の弾性と粘性を評価した。その結果、脾臓SWEは右室面積変化率と負の相関を示したが、うっ血指標とは関連性を認めなかった。次に、脾臓パラメータの三分位に基づいて患者を3群に分類して中央値494日の追跡期間で予後を調査した。脾臓SWEとSWDが最も高い値を示した患者では、心臓死と心不全増悪を含む心イベント発生率は有意に高率であった。このメカニズムに関して、末梢白血球の単球/マクロファージ関連分子であるCD36のmRNA発現を評価して検討した。脾臓SWE値は、CD36発現増加と関連しており、脾臓の構造的リモデリングと末梢炎症細胞との機能的な関連性が示唆された。(Clin Res Cardiol 2023, 942-53)
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