研究実績の概要 |
近年、要介護の前段階で高齢者の活動性が低下することをフレイルと呼ぶようになり注目されている。しかしながら、高齢者のフレイルに関与するメカニズムは十分明らかにされていない。今回我々は地域住民を対象にしたコホートスタディから血清IL-6濃度高値と血清分枝鎖アミノ酸濃度低値が高齢者のフレイル発症に関与することを見出し、報告した(Urano et al. Geriatr Gerontol Int 2024)。また本報告の中で骨粗鬆症の既往がある高齢者はフレイルが悪化しやすいことを縦断研究で明らかにした。さらに脊椎圧迫骨折は高齢者の活動性低下に大きく関与するが、縦断研究により変形性脊椎症の既往や口腔での歯の欠損が脊椎圧迫骨折のリスクファクターとなることを報告した(Taguchi, Urano et al. JBMR Plus 2023, Kuroda, Urano et al. Sci Rep 2024)。地域在住高齢者におけるコホートスタディを解析した結果、2017年から2029年の3年間と比べ2020年と2021年ではフレイル高齢者が増加しており、Covid-19パンデミックによる社会生活の変化が高齢者に悪影響をもたらしていることを明らかにした(Hirose, Urano et al. J Am Geriatr Soc 2023)。 またデイケアリハビリテーション利用者を対象とした臨床研究により、サルコペニアの判別方法としてペットボトル開栓能力の有無や下腿筋囲測定ならびに頸部周囲径測定の有用性を明らかにした(Sawaya, Urano et al. Geriatr Gerontol Int 2023, Sato, Urano et al. J Nutr Health Aging 2024, Sato, Urano et al. PeerJ 2024)。サルコペニア患者においてうつ状態の合併はサルコペニアの病態が悪化していることを明らかにした(Shiba, Urano et al. Medicina 2023)。さらにサルコペニアが進行する因子として栄養状態やベースラインの筋肉量低下を明らかにした(Sato, Urano et al. J Phys Ther Sci 2023)。
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