研究課題/領域番号 |
23K06885
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
西岡 光昭 山口大学, 医学部附属病院, 臨床・衛生検査技師長 (70738963)
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研究分担者 |
山崎 隆弘 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00304478)
末廣 寛 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40290978)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | long non-coding RNA / cell free DNA / メチル化率 / 大腸癌 / デジタルPCR |
研究実績の概要 |
本研究者らは、大腸癌腫瘍部における発現量が非腫瘍部に比べ有意に変化する3種類のlong non-coding RNA (lncRNA)を既に同定しており、これらのlncRNAのうち、大腸癌腫瘍部発現量と非腫瘍部発現量の差が最も顕著なlnc Xについてその発現調節を司るプロモーター領域のDNAメチル化部位のメチル化率を調査した。この調査には、組織から抽出したDNAからバイサルファイト処理後にDNA配列の検索を行いおおよそのメチル化率を推定した。その結果、8つあるメチル化部位のうち1つの部位(met_1)で癌部と非癌部で顕著にメチル化率に差があることが確認できた。この結果を基に、血液中に存在するcell free DNA(cfDNA)のlnc Xのmet_1のメチル化率を測定した。cell free DNAとは、血液中に存在する、アポトーシスなどの細胞死の自然なプロセスで血流へ放出されるDNAの短い断片のことを言う。cfDNA中lnc Xのmet_1のメチル化の確認にはcombined restriction digital PCR assay(CORDアッセイ)を用いた(Suehiro et al., Clin Transl Gastroenterol. 2020;11:e00176)。CORDアッセイとは、メチル化されたシトシンの存在下では制限酵素処理ができないメチル化感受性制限酵素と、高感度かつ定量可能なデジタルPCR法を組み合わせた方法である。本研究者らは、安価で高感度且つ定量性のあるこの測定法を用い、lnc Xのmet_1のメチル化率の定量法を確立した。この方法を用いて、過去の大腸癌患者血清から抽出したcfDNA (n = 17)と非癌患者のcfDNA (n = 18)を用いてメチル化率の比較を行ったところ、有意に大腸癌患者でメチル化率が高いことを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、血液検体を使用した新たな大腸癌検査法の開発であり、令和5年度は、本研究者らが発見した大腸癌と関連のあるlncRNAの一つであるlnc Xのプロモーター領域のメチル化部位の一つであるmet_1をターゲットとして、CORDアッセイというメチル化定量測定法の開発に取り組んだ。様々なメチル化感受性制限酵素を用い、また、数多くのプライマー・プローブセットを設計し、その組み合わせをメチル化率が95%以上のDNA(市販品)とメチル化率が5%以下のDNA(市販品)を用いて、デジタルPCRにて測定・検討を行った。その結果、lnc Xのmet_1におけるメチル化率の定量測定法を確立することができ、組織検体だけでなく、血液検体からも測定が可能であることを見出した。本検討内容は計画書通りであり、そのため本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、確立したメチル化率の定量測定法を用いてlnc Xのmet_1におけるメチル化率の測定を行うべく、令和5度から進めている前向き研究で収集された大腸癌患者と非癌患者の血清を用いて測定を行う予定である。症例数は大腸癌患者・非癌患者それぞれ50名程度を予定している。また、確立した測定法について、コスト削減策や、より高感度に検出できるように改良を行っていく予定である。さらには、本研究内容の特許申請も進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
大腸癌患者の血清の検体数が想定よりも少なかったため、DNA抽出キットや測定試薬の消費が想定よりも少ないため、差額が生じた。次年度は当初の検体数が集まる予定であるため、その検体の処理(DDNA抽出や測定)のための試薬を購入予定としている。また、次年度は病理組織標本を用いた検討も行う予定であり、そのための処理費用も見込んでいる。
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