研究課題/領域番号 |
23K06952
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
卜部 貴夫 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (60291663)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 糖輸送担体 / フルクトース / 虚血性脳損傷 / 脳保護療法 / ミクログリア / アストロサイト / 血管内皮細胞 / 炎症反応 |
研究実績の概要 |
脳は生理的条件下ではグルコースのみをエネルギー基質とし、その酸化的代謝によって得られるATPで神経機能活動が維持されている。虚血性脳梗塞においては,糖輸送担体(GLUT)によるグルコース輸送に障害を来すため、フルクトース代謝等の嫌気性代謝に対する理解が重要となる。脳内にはGLUT1、GLUT3は主にグルコース代謝に関係しており、脳内においては神経細胞、アストロサイトに発現している。GLUT5はフルクトース輸送に特異的であり脳のミクログリアにおけるGLUT5の発現が報告されているが、GLUT5と脳梗塞の関連に関する詳細な検討は無い。本研究は脳虚血における糖輸送体機能が破綻の状況下でGLUT5発現が誘導されることによるフルクトース利用が脳虚血の病態に与える影響について検討した。 2023年度は急性脳虚血モデル(DMCAOモデル)を作成し、経時的に虚血周辺部のペナンブラにおけるGLUT5発現変化とセルタイピングを行い、発現細胞と酸化ストレスとの関係を免疫染色にて評価した。 GLUT5は正常状態においてはミクログリアにのみ発現を認めたが、虚血後経時的にGLUT5の発現は72時間をピークに増加(p<0.001)し、その後は定常状態となった。GLUT5はアストロサイト、ミクログリアに主に発現し、一部血管内皮にも認めた。さらにGLUT5は炎症性アストロサイト、炎症性ミクログリアに多く発現しており、iNOSなどの酸化ストレスとの共存も認めた。脳虚血下でのフルクトース投与群ではGLUT5発現が増加しており、Corner Test、mNSS、Rota Rodにて機能評価を行ったところ、対照群と比較して有意な悪化が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度で急性脳虚血モデルにおける虚血脳条件下でのGLUT5の発現変化と細胞局在が明らかとなった。フルクトース投与実験では脳内GLUT5発現量が増加し、機能評価での悪化が確認され、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
GLUT5の脳虚血下での機能解析のため、急性脳虚血モデルにおいてGLUT5阻害薬を投与することにより機能予後評価やGLUT5の変化を免疫組織化学的評価を実施する。 ハダカデバネズミの急性脳虚血モデルの作成の可否を検証し、脳虚血でのGLUT5の分子病態を蛋白レベルで検証する。モデルの作成が不可能な場合は、既に報告されている低酸素負荷による評価を行う。
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