研究課題
運動ニューロン疾患では、運動ニューロンにおける病態のみならず、骨格筋やグリア細胞の相互作用が病態に大きく寄与すると考えられている。そのため、神経筋接合部(Neuromuscular junction; NMJ)を介した運動ニューロンと骨格筋の相互作用や、神経・筋ユニットとグリア細胞との相互作用を詳細に解析し得るモデルの開発が求められてきた。しかし、これらの細胞を一つのユニットとして捉えたモデルの報告はなく、その分子生理や分子病態も十分には解明されていない。本研究では、神経と骨格筋の相互作用をより生理的な条件下で再現する3次元(3D)細胞培養(神経・筋オルガノイド)を作製し、その生理機能や病態を分子レベルで解析するためのシステムを開発する。(1)iPS細胞から骨格筋へと高効率に分化誘導する方法を開発し、運動ニューロン疾患である球脊髄性筋萎縮症の疾患特異的iPS細胞から骨格筋を分化誘導し、その表現型をin vitroで再現することに成功した。またこの方法を応用し、三次元骨格筋組織を培養する方法を確立し、電気刺激により筋収縮を得ることに成功した。(2)コントロールヒトiPS細胞を用いて、神経・筋オルガノイドの培養を行った。その結果、運動ニューロンへ分化する神経前駆細胞と骨格筋へ分化する中胚葉前駆細胞により構成されるオルガノイドの形成が観察された。今後さらに培養条件の詳細を検討していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
ヒトiPS細胞から骨格筋へと高効率に分化誘導する培養法の確立と疾患表現型の再現、三次元骨格筋組織の培養とその機能性の証明に成功した。さらに神経・筋オルガノイドの形成を観察できており、概ね順調に進捗していると考えられる。
より成熟したヒトiPS細胞由来骨格筋や三次元骨格筋組織の培養法の確立、およびそれを用いた疾患解析、神経・筋オルガノイドの組織学的解析、および培養条件の改良や長期間の培養によるその成熟度の評価等を進める。
効率的な研究費の使用により、次年度使用額が生じた。試薬や実験器具等の消耗品の購入、研究技術員の雇用等に充てる予定である。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
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