研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では上位・下位運動神経系(UMN・LMN)の変性が全く独立に進むのではなく、関連性を示しながら拡大すると仮説を立て、これを検証する。本年度は剖検例の脊髄を中心に観察した。UMN変性の指標として両側の外側皮質脊髄路(LCST)変性を、LMN変性の指標として頸髄・腰髄レベルの両側前角における下位運動神経細胞の脱落を評価し、各々の程度に左右差があるか、ある場合は側方性が一致するかを調べた。孤発性でリン酸化TDP-43の異常凝集を伴うALS 64例を検討し、変性のパターンは以下に分類された。1) UMNおよびLMN変性のいずれも左右同等(58例)。2) LCSTと脊髄前角の変性程度に左右差があり、同側に偏倚する(3例。うち2例はhemiplegic type ALSとして既に報告(JNNP 2021; 92: 1014-1016)、残りの1例ではLCST変性が右優位・腰髄前角の変性が右優位)。3) LCST変性は右優位、頸髄・腰髄前角の変性は左右同等であったものの、病歴では初発症状として右上肢のUMN徴候とLMN徴候が記載(1例)。4) LCST変性は左右同等、腰髄前角の変性のみ右優位(2例)。上記のように、LCSTと前角変性の側方性が一致する症例がある一方、少なくとも側方性が不一致となる症例は見られなかった。ALSでは病変進展のスピードがはやいため病理標本には変性の左右差が顕れにくいものの、仮説の通りUMN変性とLMN変性は独立せず関連性がある可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
仮説の妥当性を示唆する結果が得られた。研究計画変更の必要はなく、次年度も本年度と同じ方針で研究を遂行する。
次年度は1) 左右差の見られなかった症例を中心に、運動野内の変性強弱と、脳幹下位運動神経核および脊髄の髄節レベルに応じた変性強弱に注目し、UMN変性とLMN変性の関連性について検証する、2) 臨床病歴と病理所見をより詳細に対比する。さらに、3)反例となる症例がある可能性もあり、症例数をさらに増やして検討する。
免疫染色用の抗体使用量・購入量が当初の計画より少なかったため。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
J Neurooncol
巻: 166 ページ: 273-282
10.1007/s11060-023-04555-5
Leukemia & Lymphoma
巻: 64 ページ: 1219-1222
10.1080/10428194.2023.2199895
Neurosurgery Practice
巻: 4 ページ: e00040
10.1227/neuprac.0000000000000040