研究課題
本研究では、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)及び歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA)の培養細胞及びマウスモデル、筋萎縮性側索硬化症(ALS)iPS細胞モデルにおいて、神経変性の分子病態を解明する。さらに、HIKESHI発現量の変異アンドロゲン受容体及びatrophin-1の毒性への効果の検証を行う。DRPLAマウスモデルにおいてはHIKESHI高発現が表現型を改善するか否かを検証する。また、Hsp990のオートファジー活性化に関わるターゲット分子を同定し、DRPLA及びALSの細胞及び動物モデルにおける病因蛋白質の選択的な分解効果の分子機構を細胞、分子、超微形態レベルから明らかにし、神経変性疾患の新規治療法を開発する。神経変性疾患は、全身の筋萎縮・筋力低下・運動失調・認知症などを主症状とし、呼吸不全などにより致命的な経過をたどる。本研究では単一遺伝子異常に因るポリグルタミン病のSBMA、DRPLAと弧発性の運動ニューロン疾患であるALSを対象として、変異蛋白質の異常な凝集と蓄積に関わる分子標的を探索同定したい。また、HIKESHIは、分子シャペロンを核内へ運搬する役割を果たし、ストレスに対する細胞の防御機構を増強して細胞死を抑制することが知られている。本研究では、HIKESHIの髙発現や発現抑制による神経変性への効果について検証したい。HSP990は従来Hsp90阻害剤とされていたが、私たちは培養細胞へのHSP990の投与によって、オートファジーの活性化が強力に起こっていることを見いだしている。本研究では、HSP990によるオートファジーの活性化に関わるターゲット分子を探索し、神経変性への効果について検証したい。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、昨年度に引き続きSBMA、 DRPLAの細胞及びマウスモデルを用いて、ユビキチン-プロテアソーム系、オートファジー、分子シャペロンの活性化や核内移行阻害による病因蛋白質に特異性の高い強力な治療法を開発するために、HSP990による治療効果、HIKESHIの高発現を検討している。さらに、ALSのiPS細胞由来運動ニューロンモデルで疾患関連遺伝子発現、分子シャペロンの変化を検討して、蛋白質分解系の神経変性疾患の病態形成への関与を生化学的・免疫組織化学的に調べている。これらにより、各疾患での病因蛋白質除去に関しての特異的な病態を検討している。ヒト神経培養細胞モデルでは、HIKESHI高発現あるいは発現抑制、HSP990投与による変異したAR、atrophin-1蛋白質の発現量、ユビキチン化やその分解課程における分子シャペロン及びオートファジー関連分子などとの相互作用について調べている。各培養細胞モデルは、正常および異常延長したポリグルタミン鎖を含有するAR、atrophin-1遺伝子を髙発現するヒト神経培養細胞(Neuro2a)モデル、ALSのiPS細胞由来運動ニューロンモデルを使用している。逆にsiRNAなどの核酸解析法を用いてHIKESHIの発現量を低下させて、AR及びatrophin-1蛋白の発現量に及ぼす影響もウエスタンブロット法で検討している。私達は既にCRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集によるHIKESHIのノックアウト細胞モデルを作製しており、これも解析に用いている。chicken β-actinプロモーターの調節下でHIKISHIを高発現するマウスモデルを既に作製し、DRPLA高発現マウスと交配してHIKISHI高発現の効果を検討している。HIKISHI高発現マウスには異常な表現型は出現していない。
SBMAマウスモデルは、chicken β-actinプロモーターの調節下で異常延長したCAGリピートをもつヒトの全長のAR遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを用いる。SBMAマウスは、表現形に性差があり、進行性の運動障害を来たす。DRPLAマウスモデルはシングルコピーのヒトの全長のatrophin-1遺伝子を発現し、てんかん、運動障害、知能低下をきたす。DRPLAマウスモデルとHIKESHI高発現マウスを交配、またSBMAマウスモデルとDRPLAマウスモデルにHSP990を投与して、それぞれの効果を、体重変化、生存率、Rotarod法、握力測定法を用いて解析する。また、オートファジーの効果を強化するために、TFEBを高発現するマウスと交配してダブルトランスジェニックマウスを作製し、これにHSP990を投与して、それぞれの効果を、体重変化、生存率、Rotarod法、握力測定法を用いて解析する。さらに、免疫組織化学などの病理学的検索、ウエスタンブロットなどを用いた蛋白発現解析および電子顕微鏡による凝集体の形態やオルガネラの観察などにより分子生物学的に検討する。特に、電顕及び免疫電顕手法を使用して、AR、atrophin-1の凝集、autophagosome、autolysosomeの変化、LC3、mTOR、beclin-1、Lamp1などの関連分子の細胞内相互位置関係を検討する。海馬については顆粒細胞の乖離や脱落の有無、苔状繊維の発芽の有無等の海馬硬化症の所見について病理学的に検索する。次には、ALSのiPS細胞由来運動ニューロンモデルで疾患関連遺伝子の変異の解析、疾患関連蛋白の発現解析を行って、UPSやオートファジーを含めて新規治療のターゲットの開発を行う。
ほぼ予定通りの執行を行ったが、軽微な金額が残存した。この金額については、次年度に全額執行予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (5件)
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