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2023 年度 実施状況報告書

社会的孤立によるマイナス感情の形成における内側前頭前野α1受容体シグナルの役割

研究課題

研究課題/領域番号 23K07000
研究機関福岡大学

研究代表者

森 征慶  福岡大学, 薬学部, 助教 (00759251)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード社会的孤立 / 内側前頭前野 / マイナス感情 / 衝動性 / 不安 / プロテインキナーゼC / アドレナリンα1受容体
研究実績の概要

ひきこもりなどの家族や友人とのつながりが希薄な孤立状態(社会的孤立)が深刻化する現代、孤立者の心の健康管理がもとめられている。特に、脳機能の発達期である幼少期に長期間の孤立を経験すると、強いマイナス感情 (不安・怒り) を生み出し、将来的に精神疾患や自殺のリスクとなる。孤立によるマイナス感情の形成には、mPFC (内側前頭前野) の神経機能の低下がかかわっているが、その分子メカニズムは明らかではない。私たちはこれまでに、孤立させたラットのmPFCにおいて、ノルアドレナリン受容体であるα1受容体数が増加していることを明らかにしている。過去の研究から、α1受容体はmPFCの神経機能を低下させる特性を持つことが明らかになっている。そこで本研究では、mPFCのα1受容体シグナル経路に焦点を当てて、孤立によるマイナス感情の形成メカニズムの解明を試みる。
α1受容体シグナルには、主に10種のPKCアイソザイムを介した経路があり、それぞれ異なる細胞応答を制御している。本年度ではα1受容体の下流経路であるPKCに着目した。孤立がどのPKCアイソザイムに対して影響を与えるのかを調べるために、孤立ラットのmPFCにおけるPKCアイソザイムmRNAレベルを評価した。
その結果、幼少期から孤立環境で飼育されたラットのmPFCでは、PKCγおよびPKCεのmRNA発現量が有意に増加していた。これらのPKCアイソザイムは、双極性障害や統合失調症などの精神疾患の発症にかかわることが示されている。そのため本研究結果から、幼少期の社会的孤立によるマイナス感情の形成メカニズムには、mPFCにおけるα1受容体-PKCγおよびPKCε経路を介した神経機能障害が関与する可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度ではPKCアイソザイムのリン酸化レベルまでを検証する予定であったが、リン酸化を調べるための抗体の選定、ならびに購入後の測定条件の最適化に時間を要したため、多少の遅れが生じた。

今後の研究の推進方策

現在では、必要な抗体の入手・条件の最適化も済んでいるため、問題なく検証を進めていけると考えている。今後は変化の見られたPKCアイソザイムを中心にリン酸化レベルを検証していく予定である。しかし、mRNAレベルとタンパクレベルは必ずしも一致するわけではないことが複数の研究で報告されている。そのため、mRNAレベルでは変化のみられなかったPKCアイソザイムに関しても同様にリン酸化レベルを検証しようと考えている。

次年度使用額が生じた理由

物品を購入した際、端数が生じたため次年度使用が生じた。令和6年度は社会的孤立により内側前頭前野で変化みられたPKCアイソフォームのリン酸化レベルの検証を実施する予定にしているので、各リン酸化PKCアイソフォームの抗体購入に使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)

  • [雑誌論文] Bortezomib Increased Vascular Permeability by Decreasing Cell-Cell Junction Molecules in Human Pulmonary Microvascular Endothelial Cells2023

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Taichi、Matsumoto Junichi、Matsushita Yuka、Arimura Moeno、Aono Kentaro、Aoki Mikiko、Terada Kazuki、Mori Masayoshi、Haramaki Yutaka、Imatoh Takuya、Yamauchi Atsushi、Migita Keisuke
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 10842~10842

    • DOI

      10.3390/ijms241310842

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Modified activity-based anorexia paradigm dampens chronic food restriction-induced hyperadiponectinemia in adolescent female mice2023

    • 著者名/発表者名
      Kuriyama Toru、Murata Yusuke、Ohtani Reika、Yahara Rei、Nakashima Soichiro、Mori Masayoshi、Ohe Kenji、Mine Kazunori、Enjoji Munechika
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 18 ページ: e0289020

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0289020

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Upregulations of α1 adrenergic receptors and noradrenaline synthases in the medial prefrontal cortex are associated with emotional and cognitive dysregulation induced by post-weaning social isolation in male rats2023

    • 著者名/発表者名
      Kawanabe Shunsuke、Mori Masayoshi、Harada Hiroyoshi、Murata Yusuke、Ohe Kenji、Enjoji Munechika
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 797 ページ: 137071~137071

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2023.137071

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Dynamic Changes of Behavioral Despair, HPA Axis Activity, and Hippocampal Neurogenesis in Male Rats Induced by Social Defeat Stress2023

    • 著者名/発表者名
      Harada Hiroyoshi、Mori Masayoshi、Murata Yusuke、Kawanabe Shunsuke、Terada Kazuki、Matsumoto Taichi、Ohe Kenji、Enjoji Munechika
    • 雑誌名

      Journal of Integrative Neuroscience

      巻: 22 ページ: 43~43

    • DOI

      10.31083/j.jin2202043

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2024-12-25  

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