研究課題/領域番号 |
23K07010
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
王 天英 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任研究員 (30436969)
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研究分担者 |
尾内 康臣 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (40436978)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 一次繊毛 / GABA / アミロイドβ |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病(AD)の病因において中心的な役割を果たすAβが一次繊毛構造を障害し、さらにシグナル伝達を妨害する可能性があることが確認されている。申請者は特に海馬での神経回路調節に重要な因子となっているGABA神経系はADで見られる認知機能異常の発現機序に重要な役割を果たしていると考えている。これらから、シグナル伝達の重要な分子基盤である神経細胞とアストロサイトの一次繊毛は、神経細胞とアストロサイト活動を修飾することでGABA作動性神経系の制御や記憶認知障害に関与する役割を担っている可能がある。そこで、本研究はADモデルマウスを用いて、認知障害におけるGABA抑制機能の異常によるシナプス可塑性の低下と海馬を中心としたCA1領域の神経細胞とアストロサイトにおける一次繊毛との関係およびその背景分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。アルツハイマー病態における一次繊毛の働きは、ほとんど未解明である。そのため、認知症モデルマウスを用いて、この遺伝子改変マウス特有の病理変化を観察することができた。また、神経細胞の一次繊毛マーカーであるAdenylate cyclase 3 (AC3)、 あるいはアストロサイトの一次繊毛マーカーであるADP-ribosylation factor-like protein 13B (Arl13B)の蛍光免疫染色法により、神経細胞とアストロサイトを特異的な抗体で標識し、3次元の画像で海馬や線条体における神経細胞とアストロサイトの一次繊毛の保有率と長さの測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、アルツハイマー病細胞モデルでの実験を計画していたが、予備実験として認知症モデルマウスの脳組織における一次繊毛の保有率と長さの測定と解析をすすめた。これらの結果は、アルツハイマー病細胞モデルの製作ならびに実験条件の決定において非常に有益な情報になると考えられる。これらの理由により、現在までの進捗状況をおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方策として、引き続きアルツハイマー病細胞モデルの培養条件を改善し、アルツハイマー病における一次繊毛の生理機能とGABA作動性神経系の制動の関連性の解析を中心とする研究を進める。そのため、RNAシーケンスを駆使し、網羅的遺伝子発現解析によって特異的に変動する遺伝子を同定し、一次繊毛のシグナル伝達やGABA抑制性神経システムに関連する因子を検出する予定である。そして、in vitroスクリーニングによって見出された一次繊毛のシグナルの制御分子候補について、in vivo活性評価を実施する。さらに、一次繊毛の機能変化によるGABA抑制性神経系の機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた細胞モデル実験は動物実験に変更され、次年度に持ち越しとなった。そのため差額が生じた。 使用計画として、網羅的遺伝子発現解析について、外部施設に解析を依頼費用がかかる見込みである。これらの費用に差額分を使用する予定である。また、実験の消耗品費、マウスの維持費、成果報告および最新の情報収集のために2024年度参加予定の学会発表のための国内外旅費として使用する。
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