研究課題/領域番号 |
23K07014
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
淵上 学 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (40403571)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 不適切な養育 / うつ病 / 腹側淡蒼球 / 異常神経活動 / 忌避学習 |
研究実績の概要 |
課題1)として、適切な養育機会の欠損によるうつ病発症脆弱性の検証を行った。適切な養育機会の欠損モデルとして母子分離ストレス(NI)を用い、忌避学習の障害としてのうつ病モデルには学習性無力(LH)を用いた。Sham群とNI群でLHの出現率を比較し、NI群で成長後のLHを増加させることが見出された。 課題2)として適切な養育機会の欠損による異常神経活動と構造異常の解明に取り組んだ。腹側淡蒼球の興奮性/抑制性神経細胞の活動変化が忌避学習に関与することに着目し、抑制性神経細胞をPreproenkephalin(Penk)に対する抗体で、グルタミン酸作動性の興奮性神経細胞をvesicular glutamate transporter 2(VGLUT2)に対する抗体で免疫組織染色を行った後にカウントし、Sham群とNI群で比較した。その結果、Penk発現細胞数に有意差は認めなかった一方で、腹側淡蒼球のVGLUT2陽性細胞数は、NI群でSham群に比して有意な低下を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「適切な養育機会の欠損によるうつ病発症脆弱性の検証」においては、当初の計画通りに動物での疾患とストレスモデルを組み合わせて、適切な養育機会の欠損によりうつ病発症脆弱性が形成されることを明らかにした。 「適切な養育機会の欠損による異常神経活動と構造異常の解明」においては、適切な養育機会の欠損によって腹側淡蒼球におけるグルタミン酸作動性の興奮性神経細胞が減少することを明らかにし、同部位での神経興奮性の異常を呈することが示唆された。当初計画していた、マルチユニット記録による腹側淡蒼球の神経活動の評価も進めており、概ね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き「適切な養育機会の欠損による異常神経活動の解明」に取り組む。さらに、適切な養育機会の欠損を経てうつ病モデルを呈するラットの異常神経活動と構造異常を解明する目的で電気生理実験、免疫組織染色を行い、Sham + 非LHとNI+LH間での差異を比較した後、Sham + LHとNI+LH間、NI+非LHとNI+LH間での差異を解析する。また、腹側淡蒼球において神経活動操作を行い、適切な養育機会の欠損を経たうつ病の予防法と治療法の開発に取り組む。
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