研究課題
自閉スペクトラム症(ASD)の病態に炎症反応の亢進と免疫系細胞の病態への関与が注目されている。申請者らは、ASDで機能不全が疑われるマクロファージに着目し、炎症性サイトカインであるTNF-αの発現上昇を報告した。続いて、マクロファージをヒトiPS細胞由来神経細胞と共培養する実験系で、ASD者のマクロファージは神経細胞の樹状突起をより強く退縮させることを見出した。樹状突起の退縮への関与に、申請者は貪食能に着目した。マクロファージは貪食能を有し、免疫応答に重要な役割を果たす。これらのことからASD者のマクロファージは貪食能に異常が生じ、神経細胞機能に影響を与えているという仮説を立てた。本研究課題では以下の4点について検討している。①ASD者血液検体からマクロファージを作成し、同時にマクロファージ貪食能の解析を行う。②ASDモデルマウスの血液よりマクロファージを、脳よりミクログリアを作成しそれぞれのRNA-seq解析を行う。③ASD、健常者(TD)由来マクロファージのscRNA-seqを行う。① M1/M2マクロファージの貪食能について検討:DSM-5にて診断された、ASD患者及び健常対照者の全血から、比重遠心法により末梢血単核球を単離し、その後、MACS(Milteny Biotec社)によりCD14+単球を分離する。次に、M1/M2 マクロファージ分化誘導用キット(R&D Systems)を用いてそれぞれM1/M2マクロファージへ分化させ、貪食能を評価する。貪食能は、(ⅰ) pHrodo Red, E.coliと、(ⅱ)ヒトiPSニューロンのシナプトソームを単離し、pHrodo Red Avidin (Fluorogenic pHSensor)でラベルしたものでそれぞれタイムラプスイメージングを行い(5分間隔、2時間撮影)評価する。
2: おおむね順調に進展している
ASD者20名、TD者20名の末梢血単核球から分化させたマクロファージの貪食能についての検討が終了している。結果、M2マクロファージはM1マクロファージより貪食能が高かった。また、M2マクロファージの貪食能は、TD者に比してASD者では有意に低いという結果を得ている。
次年度は、ASDモデルマウスの血液よりマクロファージを、脳よりミクログリアを作成しそれぞれのRNA-seq解析を行っていく。また、ASD、TD由来マクロファージのscRNA-seqを行う準備を開始する。また、マクロファージの貪食能に関与が想定される因子についてqRT-PCRで評価していく。
物品費が当初予定していた額よりも少なくなり、次年度に繰り越しとなった。次年度はRNAseqを予定しているため、その費用に充てる予定である。
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Molecular Autism
巻: 15 ページ: 10
10.1186/s13229-024-00589-2