研究課題/領域番号 |
23K07023
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
眞野 あすか 日本医科大学, 医学部, 講師 (50343588)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CRF / 脳腸相関 / IBS / ストレス / 大腸 |
研究実績の概要 |
過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome, IBS) は、慢性的に腹痛や便通異常が続く腸の機能的疾患でストレスと関係が深いことが知られている。IBSは「脳腸相関」の異常が病態に大きく関与していると言われている。脳内ストレス伝達物質である副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (corticotropin-releasing factor, CRF)は、ストレスにより大腸の機能を過剰に亢進するため、大腸での過剰分泌がIBSの病態形成に関与していることが示唆されている。しかしながらCRFによる大腸の機能障害に関する腸から脳への求心性情報伝達機構の詳細は明らかではなくストレスによるIBSの病態形成機構を解明することを目的としている。 研究実施計画を元に以下の実験を行った。 横隔膜直下にて迷走神経を切除したラットにおいてCRF を腹腔内へ投与し、CRFによる延髄孤束核のFos発現増加に対する迷走神経切除の影響を解析した。迷走神経切除はCRFの延髄孤束核のFos発現増加作用を有意に抑制した。この結果からCRFによる大腸機能障害の中枢への情報伝達は迷走神経を介していることが明らかになった。 次にストレスを与えたラットの迷走神経節でのCRF1型受容体陽性細胞におけるpCREB発現を解析した。ストレスにより迷走神経節にけるpCREB発現は増加し、さらにCRF1型受容体陽性細胞におけるpCREBの発現も有意に増加した。 以上2つの研究結果に加えて、迷走神経節は末梢組織での感覚情報を上行性に延髄孤束核に伝えている神経群の細胞体の集合部位であること、ストレスにより大腸におけるCRF発現が増えることが報告されていることから、ストレスにより大腸で増加したCRFが迷走神経の神経終末へ作用し、その情報が迷走神経を上行性に伝導し、迷走神経節を経由して延髄孤束核へ入力している可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究実績により研究計画に従い順調に研究を遂行することができている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果は本研究の根幹を成す基礎的なデータである。本研究成果をもとに研究実施計画に則り研究を遂行することが可能であると考える。よって現段階では研究計画の変更や研究を遂行する上での課題等はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に使用する予定があり予算を確保していたが、予定よりも少額となったために差引額が生じてしまった。差引額は1693円であり、本年度の使用計画に支障をきたす額ではないが、本年度は差引額が生じないよう努めたい。
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