研究課題/領域番号 |
23K07039
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
富永 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50360037)
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研究分担者 |
岩原 昭彦 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (30353014)
小川 太龍 花園大学, 文学部, 准教授 (00826456)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 身体症状症および関連症群 / 認知行動療法 / 身体的苦痛症 / 遠隔精神医療 / 慢性疼痛 / 集団精神療法 / Telepsychiatry / マインドフルネス |
研究実績の概要 |
身体症状症Somatic Symptom Disorder:以下,SSD)は不安やうつとの合併も多く,精神医学的観点を治療に取り入れる必要がある。本研究では,SSRDに対して,virtual reality(VR)を用いて瞑想,呼吸法等マインドフルネスの要素を組み込んだ集団認知行動療法を実施し,セルフケアの向上を目指すためのプログラムの開発に取り組んでいる。 SSDに対するVirtual Reality(VR)を用いた集団・認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy; 以下,CBT)による介入群の対照群に対する優越性として臨床的有効性を検証することを目的とする。 参加者(Patient: P), 介入(Intervention: I), 比較対照(Comparison: C), アウトカム(Outcome: O)にて本研究の仮説を定式化すると次のような形式で示す。 P: SSDの参加者に対し、I: 通常治療に加えてVRを用いた集団CBTを実施すると、C: 通常治療のみに比較して、O: 参加者評価によるQOLおよび疾患特異的症状の重症度は,改善を示す、という形式である。 SSRDに対する認知行動療法のプログラムはすでにおおよその概要は完成している。VRをCBTにどのように活かすかをメンバー間で議論中である。VRのアプリについて各会社と検討している。具体的には、SSD患者は身体症状への恐怖(例えば、痛み恐怖)から外出に恐怖があり、社会曝露を行うVRコンテンツと禅学的CBTで心身の受容を促すVRコンテンツを制作を試みている。360°カメラを用いた体感型のVR動画、あるいは、360°カメラをスキャンしてメタバースとして制作するかを予定している。本研究の研究計画書は学内医学倫理審査委員会に申請中である。UMINに登録済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SSDの重症度を測定する疾患特異的なアウトカムとなる心理尺度が日本にないため、効果判定できる尺度の作成中である。具体的には、ドイツで開発されたThe Somatic Symptom Disorder-B Criteria Scale(SSD-12)の日本語版を作成中である。VRコンテンツの制作がやや遅れている。一旦既存のVRコンテンツの応用を試みて進めようとしたが、メンバー間での協議で、肝であるVRへの没入感とリアル感が不十分との意見が出て、一からコンテンツを作成することが必要となり、各会社と製作時間と見積もりなどで時間を要している。今後早急に会社を決定していく。このように、研究内容に沿ったコンテンツの希望と予算内で開発できるものとにやや乖離があり、詰めている段階である。 また、VRゴーグルは当初はスマートフォンに軽量の紙製3Dスコープを予定していたが、チームメンバー間で実際に装着して仮プログラムに用いてみると頭頸部の不快感が生じた者が複数おり、変更せざるを得なくなった。そのため、VRゴーグル機器の選定を改めてし直すこととなっている。 禅学的CBTの内容は、共同研究者とミーティングを重ねており、順調に進んでいる。360°カメラで実写する寺院、風景場所は数カ所の候補で固まっている。 被検者のリクルートに向けては当院集学的痛みセンターおよび総合診療部などとカンファレンスなどを通して連携強化を図っている。本研究のためにSSD専門外来を設けて被検者リクルートの確保をできるよう努めている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度中にVRコンテンツの制作会社を選定し、共同でその内容を詰めていく。360°カメラを用いた動画撮影を行うにあたり、①社会曝露課題の公共交通に乗る課題については、電車かバスを貸し切りっての撮像許可を得る。②軽度ランニングの課題については、揺れによる動画酔いを防ぐため、専門家に依頼またはぶれ防止の360°機器を購入する。③禅学的CBTの課題については、共同研究者から撮影許可を依頼中である。メタバースを用いるかどうかは、VR制作会社と予算との兼ね合いであり、作成可能かを検討していく。 CBTプログラムは、今後も共同研究者、メンバーと協議し完成させる。 医学倫理審査委員会の承認が下りれば、被検者リクルートを開始する。事前に他科から身体症状症患者の紹介をすでに受けており、今後も専門外来を通してリクルート数を確保していく。 2025年度はメンバーでのトライアルの練習を繰り返して、問題を抽出、解決した後に実際にプログラムを実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、Virtual Reality(VR)機器を用いた認知行動療法を行うが、そのVR機器と動画制作に関わる費用(VR制作費)と認知行動療法の実施の際の人件費(雇用人件費)が、研究費で大きく占める。 1. VR制作費におけるVR機器については、当初はスマートホンに手軽な紙製3Dスコープを装備しての実施を予定していたが、スマートホンの重さが長時間のVR視聴には、手や頸部などの疲労感が出てしまい、年度途中で却下となった。代わって、メタクエストなどのVR機器を検討したが、メンバーでの予備的実験にて頭部の重さ、不快感、および動画の際のVR酔いが生じてしまい、機器の選定に時間を要している。2023年度に各社で企画を何度も相談し、見積もりも得ていたが、機器の選定は次の動画ソフトにもよって変わるので、それが選定中なので結果として費用は生じていない。2024年度にVR動画の制作の内容が決まれば、機器も選定できる予定である。 2. VR動画の制作については、メタバース、バーチャルツアー、360°カメラを用いたVR動画の3つから検討中で、各社と相見積もりも出して検討中である。2024年度中には会社を選定し、ソフトを開発に入る予定である。360°カメラでの撮影は、制作会社に依頼するか、チームで撮像するかは費用次第である。 3. 認知行動療法の実施の際の人件費(雇用人件費)については、実施前なので費用は発生していない。2024年度以降に実際に実施を行う中で発生してくる。
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