研究課題/領域番号 |
23K07048
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
首藤 隆秀 久留米大学, 医学部, 准教授 (70412541)
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研究分担者 |
西 昭徳 久留米大学, 医学部, 教授 (50228144)
黒岩 真帆美 久留米大学, 医学部, 助教 (20585690)
中村 祐樹 久留米大学, 医学部, 助教 (90446104)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | うつ病 / 歯状回 / ドパミン / ノルアドレナリン |
研究実績の概要 |
うつ病患者の約3割は既存の抗うつ薬が効かない治療抵抗性うつ病であり、治療効果の高い新規うつ病治療法の開発が求められている。申請者らはこれまでに、抗うつ薬の効果発現には、海馬歯状回特異的にドパミンD1受容体の発現増加とそれに伴うドパミンD1受容体シグナルの増強が重要であること、D1受容体刺激薬の併用投与は抗うつ薬の抗うつ効果を増強することを明らかにしており、現在、ドパミンD1受容体シグナルに着目した治療効果の高い新規うつ病治療法の開発を目指している。 これまでの実験により、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の併用投与により、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) による歯状回D1受容体発現増加作用と、うつ病様行動の改善効果が増強するという結果が得られており、現在臨床応用のないドパミンD1受容体刺激薬に代わりノルアドレナリン関連薬による抗うつ薬の増強が期待される。また、既存のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) ではD1受容体増加が認められないため、未だ明らかになっていない最適なセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害バランスが存在する可能性が考えられる。 本年度は、様々な投与量でSSRIとノルアドレナリン再取り込み阻害薬の併用投与を行い、リアルタイムRT-PCRによる歯状回D1受容体発現量の解析およびうつ病様行動の改善効果の解析を行った。その結果、それぞれ単独投与では影響が認められないが、併用投与すると歯状回D1受容体発現増加作用と、うつ病様行動の改善効果を増強させる投与量を特定した。 今後は、最適な用量でSSRIとノルアドレナリン再取り込み阻害薬を併用投与し、うつ様行動測定中の歯状回ドパミン・ノルアドレナリン動態を神経回路レベルで解析し、抗うつ効果の増強に重要な神経回路およびその活動状態を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験により、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬デシプラミンの併用投与により、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) による歯状回D1受容体発現増加作用と、うつ病様行動の改善効果が増強するという結果が得られている。既存のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) ではD1受容体増加が認められないため、未だ明らかになっていない最適なセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害バランスが存在する可能性が考えられる。 本年度は様々な投与量でSSRIフルオキセチンとデシプラミンの併用投与を行い、リアルタイムRT-PCRによる歯状回D1受容体発現量の解析およびうつ病様行動の改善効果の解析を行った。その結果、それぞれ単独投与では影響が認められないが、併用投与すると歯状回D1受容体発現増加作用と、うつ病様行動の改善効果を増強させる投与量を特定することができた。この組合せの併用投与は、これまでに既に報告しているドパミンD1受容体刺激薬とフルオキセチンの併用投与と同程度の顕著な増強作用であるため、抗うつ効果に最適なセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害バランスに近いと考えられる。 また、ファイバーフォトメトリーを用いたドパミン・ノルアドレナリンの測定においては、歯状回でのドパミン・ノルアドレナリンの検出に適したバイオセンサーの検証およびデータ解析プログラムの選定を行い、うつ様行動測定時における変動を検出することが可能な実験環境を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
歯状回D1受容体発現増加作用とうつ病様行動の改善効果を増強させる最適な用量でフルオキセチンとデシプラミン(または他のノルアドレナリントランスポーター阻害薬)を併用投与し、うつ様行動測定中の歯状回ドパミン・ノルアドレナリン動態を解析する。さらに、歯状回へ投射するノルアドレナリン神経選択的、またはドパミン神経選択的に活性化状態を解析し、抗うつ効果に重要な神経回路およびその活動状態を明らかにする。 さらに、抗うつ薬の治療効果発現および神経伝達物質の放出に重要なタンパク質であるp11をノルアドレナリン神経選択的に欠損させた遺伝子改変マウスを用いて、抗うつ薬が歯状回に投射するノルアドレナリン神経にどのように作用するかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在所有しているドパミンβ水酸化酵素(DBH)-Creマウスを用いてノルアドレナリン神経選択的p11欠損マウスを作成したところ、遺伝子型判定でのエラーが頻発したため、代わりとなる遺伝子改変マウス(ノルアドレナリントランスポーター(NET)-Creマウス)を新たに購入する必要が生じた。海外からの輸入であるため年度内に納期が間に合わず、次年度に購入することにした。そのため次年度使用額が生じた。 また、ファイバーフォトメトリー解析において、測定装置とマウス頭部のファイバーカニューラを接続するパッチコードは、ねじれ防止のため途中にロータリージョイントを設置しているが、その部分でノイズが発生することが判明し、ロータリージョイントを使用せず一本の長いパッチコードを使用する必要があると考えた。このパッチコードも海外からの輸入であるため年度内に納期が間に合わず、次年度に購入することにした。そのため次年度使用額が生じた。
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