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2023 年度 実施状況報告書

ペントシジン脳内蓄積モデル:性成熟期サルを用いた統合失調症発症メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K07049
研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

石田 裕昭  公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 主任研究員 (70728162)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード統合失調症 / 思春期 / マカクザル / マーモセット / 血液バイオマーカー
研究実績の概要

10代の児童を対象に指尖スキャンを用いたAGEs計測と精神病様体験の相関を調査した思春期コホート研究では、AGEsが高い児童は精神病様体験が持続するリスクが対照群よりも約1.7倍高いことが示され、思春期の高AGEs値が統合失調症などの精神疾患の発症に関わる可能性を示唆している(Miyashita, et al., 2021, Npj Schizophrenia)。しかし、乳幼児期や思春期の健康な児童に対する採血は研究上困難であり、したがって、血漿ペントシジンと疾患リスクとの関連性は不明である。そこで本研究では、マーモセットを対象に、新生児期から性成熟期(ヒトの思春期に相当)、老年期までのマーモセットの血漿ペントシジンを計測し、ペントシジン発達軌跡を明らかにすることで、ライフコース全体でのペントシジン値の変動と疾患リスクの関連性について仮説を立てることを目的とした。
野生型マウス、モルモット、マーモセット、マカクザル、ヒトの血漿ペントシジンを計測した結果、マウス以外の動物種ではペントシジンが再現性高く計測できた。マーモセットとマカクザルの血漿ペントシジン値の発達軌跡を観察すると、ペントシジンは乳幼児期に非常に高値であり、性成熟期・成体期に低下し、老年期に再び上昇する「U字」曲線を描くことが明らかになった。これらの結果から、ペントシジンは正常発達による低下と老化による増加という異なる動態があることが示唆された。この結果を踏まえ、思春期に好発する統合失調症とペントシジン動態の関連性を示す作業仮説は、「霊長類の正常発達個体では、乳幼児期と比較して性成熟期(思春期)にペントシジン値が低下するが、病態個体ではペントシジン値が性成熟期に低下せず高止まり、これが精神病発症のリスク因子になる」と考えられた。発達期特異的な病態仮説を検証するためには、性成熟までの期間が短いマーモセットが特に疾患モデルとして有用であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の作業仮説は、「霊長類の正常発達個体では、乳幼児期と比較して性成熟期(思春期)にペントシジン値が低下するが、病態個体ではペントシジン値が性成熟期に低下せず高止まり、これが精神病発症のリスク因子になる」であった。本年度は、霊長類モデル(マーモセットおよびマカクザル)の血漿サンプルを用いて、この仮説を支持する結果が得られている。

今後の研究の推進方策

本研究課題は、ヒト思春期をモデル化したマカクザルの脳内ペントシジン蓄積が、どのような神経障害を生じるかを明らかにし、統合失調症の発症機序という精神医学最大の未解決課題に、初めて霊長類モデルを用いてメカニズムの解明へ切り込むことを目指している。
次年度は、脳内でのペントシジン蓄積を引き起こすため、マカクザルの脳脊髄液中に直接、糖化ストレス物質であるペントシジンを注入し、機能障害が惹起されるかを検証する。ケージ内での行動変容やトランスレターブル脳波指標の経時的記録および投与ザル死後脳を用いた免疫組織学的研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

予定していた論文投稿を見送ったために残金が生じた。次年度、投稿するのでその費用に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Secondary somatosensory and posterior insular cortices: a somatomotor hub for object prehension and manipulation movements2024

    • 著者名/発表者名
      Ishida Hiroaki、Grandi Laura Clara、Fornia Luca
    • 雑誌名

      Frontiers in Integrative Neuroscience

      巻: 18 ページ: 1-10

    • DOI

      10.3389/fnint.2024.1346968

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 性成熟期に糖化ストレスを亢進させた統合失調症モデルザルの作出と病理解明2023

    • 著者名/発表者名
      石田裕昭
    • 学会等名
      一般社団法人 予防衛生協会 第27回予防衛生協会セミナー『動物技術者教育の現状と展望』
    • 招待講演
  • [学会発表] 非ヒト霊長類のペントシジン脳内蓄積は易怒・興奮と鬱様・不活発行動と同期する2023

    • 著者名/発表者名
      石田裕昭, 新井誠
    • 学会等名
      第33回日本メイラード学会年会
  • [学会発表] ペントシジンの脳内蓄積:蓄積は精神症状の原因か結果か?2023

    • 著者名/発表者名
      石田裕昭
    • 学会等名
      第119回日本精神神経学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 慢性期統合失調症患者の死後脳におけるペントシジン蓄積2023

    • 著者名/発表者名
      石田裕昭, 宮下光弘, 大島健一, 河上緒, 関山一成, 鴻江真維, 関絵里香, 新井信隆, 瀧澤俊也, 永田栄一郎, 糸川昌成, 新井誠
    • 学会等名
      第17回日本統合失調症学会
  • [図書] 精神現象の生物学的基礎(A):脳の構造と機能 (精神医学と精神医療 新・精神保健福祉士シリーズ 1 )2023

    • 著者名/発表者名
      石田裕昭(責任編集:高岡健・古屋龍太)
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      弘文堂

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公開日: 2024-12-25  

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