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2023 年度 実施状況報告書

放射線に誘発される細胞死プロセスを表現する統合的モデルの開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K07060
研究機関大阪大学

研究代表者

坂田 洞察  大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10709562)

研究分担者 平山 亮一  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部, 研究統括 (90435701)
皆巳 和賢  大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90634593)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワードモンテカルロシミュレーション / DNA修復 / 細胞死 / 放射線生物学 / Geant4-DNA
研究実績の概要

細胞が放射線に晒されると、放射線或いは放射線の水分解を介して生成されたラジカルによってDNA損傷が誘発される。DNA損傷が細胞内で生じると、修復酵素/蛋白が集積し、DNAが修復される。しかし、この修復プロセスで修復できず、DNA損傷が残存すると細胞死へと至る。本研究では、放射線に誘発されるDNA損傷が、修復酵素/蛋白の働きによってどのように修復され、どのように残存したDNA損傷が細胞死を誘発するかを記述する統合モデルの開発を行なっている。放射線や放射線誘発性ラジカルによるDNA損傷生成をシミュレーションできるアプリケーションと組み合わせる事で、放射線と物質の相互作用から出発し修復蛋白動力学を考慮した上で細胞死を予測できるプラットフォームを開発している。
本年は、既存のDNA損傷によってトリガーされる蛋白動力学を記述できるモデル(Belov et al 2015)を拡張して、放射線に誘発される細胞死を予測できる統合モデルを開発した。
蛋白動力学モデルによって修復酵素/蛋白集積の時間変化とDNA繊維の結合を計算した。このモデルにDNA修復に失敗し細胞死を誘発する確率を考慮することで、残存するDNA損傷が誘発する細胞死の確率を計算できる。この細胞致死確率を考慮した蛋白動力学モデルによって、修復蛋白、DNA修復動力学と共に、細胞致死率(生存率)を統合的に計算可能となった。本研究では、正常繊維芽細胞で測定された蛋白質集積、DNA結合、細胞死を再現するように萌出るパラメーターを決定した。現在、論文投稿に向け準備を行なっている。また、この統合モデルを放射線モンテカルロシミュレーションコードGeant4-DNAに実装する為準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

蛋白動力学モデルを拡張した細胞死を予測できる統合モデルの開発において、モデルパラメーターを決定するために充実した実験データセットが必要であった。当初計画では、蛋白集積やDNA結合、細胞生存率まで多岐にわたるデータ測定を予定していた。しかし、正常繊維芽細胞においては、蛋白動力学が非常に類似しており、正常繊維芽細胞グループで同一のモデルパラメータを用いるだけで十分であり、細胞種ごとにデータ測定を取る必要性がなかった。このことにより、モデルパラメーターの決定には、DNA結合と細胞生存率のデータを揃えるのみで十分となった。そこで公開されている既存のヒトの正常繊維芽細胞NB1RGBのDNA結合・細胞生存率データを用いてモデルパラメーターの決定を試行したところ十分モデルパラメーターを決定でき、統合モデルの開発を行うことができた。従って、当初計画より早く進められており、極めて順調な進捗となっている。

今後の研究の推進方策

本年度は主にヒトの正常繊維芽細胞NB1RGBを用いて統合モデルを作成した。しかしDNA再結合に関するデータが少なく、広いLET範囲に適用できるか不明瞭である。従って、統合モデルの信頼性を高める為、DNA再結合に関して、データ測定を計画している。また、正常繊維芽細胞だけでなくHSG細胞などのがん細胞に適用可能な統合モデルが作れるか検討する。
正常繊維芽細胞向けの統合モデルはGeant4-DNAに実装し、世界に広く公開することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

本年度に予定していた実験データを取得する必要性がなくなった為当初計画より使用額が少ない。余り分は研究の進捗が順調な為、研究を前倒しし、他の細胞腫の実験データや、検証のための追加データ測定の為に使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] CNRS/University of Bordeaux/IRSN(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      CNRS/University of Bordeaux/IRSN
    • 他の機関数
      1
  • [国際共同研究] University of Wollongong(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      University of Wollongong
  • [学会発表] Development of a DNA Damages Repair Model Considered Alternative Non-homologous End Joining2023

    • 著者名/発表者名
      Hikaru Yamaguchi
    • 学会等名
      JSRT-JSMP Joint International Conference on Radiological Physics and Technology (ICRPT)
    • 国際学会
  • [学会・シンポジウム開催] The 5th Geant4 International User Conference at the Physics-Medicine-Biology Frontier2024

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公開日: 2024-12-25  

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