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2023 年度 実施状況報告書

免疫細胞のホウ素薬剤取込能を評価しホウ素中性子捕捉療法後の免疫への影響を解明する

研究課題

研究課題/領域番号 23K07080
研究機関京都大学

研究代表者

渡邉 翼  京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (30804348)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード中性子捕捉療法
研究実績の概要

ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy, BNCT)は、ホウ素原子(10B)がエネルギーの低い中性子を取り込みアルファ線とリチウム原子核に核分裂を起こす核物理反応を利用した癌治療である。分裂後の粒子飛程は10マイクロメートル以下と短く細胞直径を超えない。ホウ素を取り込んだ細胞へ中性子を照射すれば細胞内で選択的に核反応を起こして死滅させることができる。BNCT用ホウ素薬剤としてアミノ酸類自体であるboronophenylalanine (BPA)が開発され、BNCTによる癌治療に実臨床で用いられている。このBPAはL型中性アミノ酸トランスポーター(LAT)を介して細胞内に取り込まれるが、免疫細胞のうちの1つT細胞も活性化時にアミノ酸要求性が増加し、LATの発現が増加することが明らかとなった。また、栄養要求性向上は抗腫瘍効果に寄与する免疫細胞だけでなく抑制性マクロファージもLATを高発現し、アミノ酸の積極的な取り込みは免疫抑制的な機能の一端も担っている。
以上 のBNCTの現状と腫瘍免疫の知見を背景に、BPAを用いたBNCTの免疫細胞への影響を調べることが本研究の目的である。具体的にはマウスから摘出した免疫細胞および皮下腫瘍マウスモデルを用いてBPA投与後に中性子を治療が成立する量を照射し、免疫細胞へのBPAの取り込み・機能へ与える影響・viabilityへ与える影響を評価するとともに、BNCTが抗腫瘍免疫へ与える正および負の影響両面を解析することを目的とする。本年度はフローサートメーターを用いてBPAを用いたBNCT後の免疫細胞のviabilityへの影響を解析した。また、皮下腫瘍マウスモデルを用いてBPAを用いたBNCT後の抗腫瘍効果に与えるT細胞の影響についても評価した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウスから摘出した免疫細胞および皮下腫瘍マウスモデルを用いてBPA投与後に中性子を治療が成立する量を照射し、免疫細胞へのBPAの取り込み・機能へ与える影響・viabilityへ与える影響を評価するとともに、BNCTが抗腫瘍免疫へ与える正および負の影響両面を解析することを目的とし、本年度はフローサートメーターを用いてBPAを用いたBNCT後の免疫細胞のLAT1の発現状態の評価、BPAをとりこませた後に中性子を照射した状態でのviabilityへの影響を解析した。まずはマウスの免疫細胞を用いて、免疫細胞ごとのLAT1の発現を複数の市販の抗マウスLAT1抗体を一次抗体として用いて同定・評価を試みたが、種類・濃度・使用条件などを調べてみたものの検出がうまくいかず市販の抗マウスLAT1抗体ではLAT1のフローサイトメーターを用いた検出は難しいと判断した。こちらに関しては条件などを再度検討しなおし、次年度以降の課題とする。次にマウス免疫細胞を摘出・BPA添加培地にて培養後、BNCTを行い各免疫細胞ごとのviabilityを評価した。本年度は照射枠の制限によりおおまかな免疫細胞ごとのviability評価にとどまったが、一定の傾向をつかむことができた。次年度はより詳細な表現形・分化度の免疫細胞のBNCT後のviability評価を行う。皮下腫瘍マウスモデルを用いてBPAを用いたBNCT後の抗腫瘍効果に与えるT細胞の影響についても評価した。その結果、BNCT後の抗腫瘍効果に関する免疫細胞の寄与は、通常のX線を用いた放射線治療後の抗腫瘍効果と異なる性質・異なるタイミングでの寄与が可能性として浮上した。

今後の研究の推進方策

本年度で得られた知見をもとに、引き続きマウスから摘出した免疫細胞および皮下腫瘍マウスモデルを用いてBPA投与後に中性子を治療が成立する量を照射し、免疫細胞へのBPAの取り込み・機能へ与える影響・viabilityへ与える影響を評価する。特に、免疫細胞それぞれのLAT1発現をフローサイトメーターで測定できる手法の確立を条件検討・抗体の探索により目指す。マウス用の市販の抗LAT1抗体のうちフローサイトメーターを公に適応内とした抗体は存在しない。膜貫通たんぱく質LAT1の膜に対する存在状態、他のたんぱく質との相互作用、細胞内でのLAT1の状態などが影響を及ぼしていると考えられる。免疫染色などとは異なり、フローサイトメーターでは賦活化のプロセスを行うことが困難であることも影響している。フローサイトメーターの測定が可能な温和な条件を用いてこれらの状況を改善するための手法の確立を目指す。また、より最適な抗体の検討を行う。また、次年度はより詳細な表現形・分化度の免疫細胞のBNCT後のviability評価を、マウス免疫細胞を摘出・BPA添加培地にて培養後、BNCTを行いフローサイトメーターを用いて行う。次に皮下腫瘍マウスモデルを用いてBPAを用いたBNCT後の腫瘍組織内浸潤免疫細胞の分布および割合、近傍リンパ節内の免疫細胞の割合を経時的に評価する。 また、同等線量のX線を照射した場合にくらべての、上記腫瘍組織内浸潤免疫細胞の分布および割合、近傍リンパ節内の免疫細胞の割合の変化とBNCT後の変化とを比較し、従来のX線治療と比較したBNCTの免疫細胞に与える影響について調べる。

次年度使用額が生じた理由

一部安く仕入れられたため。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Proposal of recommended experimental protocols for <i>in vitro</i> and <i>in vivo</i> evaluation methods of boron agents for neutron capture therapy2023

    • 著者名/発表者名
      Hattori Yoshihide、Andoh Tooru、Kawabata Shinji、Hu Naonori、Michiue Hiroyuki、Nakamura Hiroyuki、Nomoto Takahiro、Suzuki Minoru、Takata Takushi、Tanaka Hiroki、Watanabe Tsubasa、Ono Koji
    • 雑誌名

      Journal of Radiation Research

      巻: 64 ページ: 859~869

    • DOI

      10.1093/jrr/rrad064

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pharmacokinetic Study of 14C-Radiolabeled p-Boronophenylalanine (BPA) in Sorbitol Solution and the Treatment Outcome of BPA-Based Boron Neutron Capture Therapy on a Tumor-Bearing Mouse Model2023

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Tsubasa、Yoshikawa Tomohiro、Tanaka Hiroki、Kinashi Yuko、Kashino Genro、Masunaga Shin-ichiro、Hayashi Toshimitsu、Uehara Koki、Ono Koji、Suzuki Minoru
    • 雑誌名

      European Journal of Drug Metabolism and Pharmacokinetics

      巻: 48 ページ: 443~453

    • DOI

      10.1007/s13318-023-00830-y

    • 査読あり

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公開日: 2024-12-25  

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