研究課題/領域番号 |
23K07094
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
平田 雅彦 大阪医科薬科大学, 薬学部, 講師 (00268301)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中性子補足療法 / ジスルフィラム / がん / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT)は、理想的な薬物-がん物理療法として注目を受けてきた。近年、L-p-Boronophenylalanineを用いたBNCTが保険適用となり,次世代の革新的放射線治療として期待される。新たなBNCT用薬剤の開発は、適応がんの拡大、がん治療の選択肢が広がることが期待される。BNCTでは、腫瘍組織内に一定の10B濃度の集積が必要であり、多量の薬剤投与が必要となるため、高い安全性が求められる。そこで、安全性の観点から新規BNCT用薬剤をドラッグデザインし、開発することを計画した。 ジスルフィラム(DSF)はアルコール依存症の治療薬として長年使用されてきたアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)阻害剤であり、高い安全性を有することが広く知られている近年、DSFが生理的な濃度の銅と併用することで様々な機序でがん細胞に細胞死を誘導し、化学療法を増強する抗がん剤としての可能性が注目されている。DSFには様々ながん種と複数の相互作用を有し、がん組織に集積・滞留することが期待される。したがって、DSFホウ素誘導体は、特性の異なる様々ながんに適応でき、幅広いBNCTがん治療が期待される。また、安全性が極めて高いことから、治療効果を発揮する腫瘍組織内10B濃度に達するまで投与量を増加可能であり、BNCT用ホウ素含有薬剤として高い可能性を有する。 本年度の研究では、DSFをリード化合物として、アミノ基の側鎖にホウ素を導入した新規化合物のドラッグデザインした。新規化合物の合成は、既報を基に、DSFの合成法を参考に合成。すなわち、ホウ素含有ジアルキルアミンを合成後、続いて二硫化炭素を用いてDSFホウ素誘導体の合成を試みた。その結果目的の化合物を得ることに成功したが、化合物の物性が悪く、十分な収量を得ることができなかった。現在、ざまざまな合成、精製条件を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究予定は、新規化合物のドラックデザインと合成を行うことであった。その点では研究の目標は達成している。しかしながら、化合物の物性が悪く、精製が困難であった。この解決には、合成反応そのものの改善と精製法の改善が必要と考えられた。今後、研究を進めて行くうえで、化合物を十分量得るべく前記の改善が必要になっているため、進捗状況をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度 DSFホウ素誘導体のがん組織への集積性について調べる。C6グリオーマ担がんモデルマウスを用いて、DSFホウ素誘導体投与後のがん組織および各組織へのホウ素集積性をICP/MS装置を用いて調べる。同様にBPAのがん集積性を調べ、新規化合物と比較する。次いで、各種担がんモデルにおけるがん集積性の検討し、各種担がんモデルマウス(膵がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がんなど)を用いて、DSFホウ素誘導体投与後のがん組織をはじめとする各組織へのホウ素集積性をICP/MS装置を用いて調べる。同様にBPAのがん集積性を調べ、新規化合物と比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究予定では、新規化合物を今後の研究推進可能な量を合成する予定であったが、十分な合成量を得ることができなかった。そこで、収量改善の検討を微量で進めているため、当初の予定額よりも、使用額が少なくなった。今後、研究推進に十分な量の新規化合物を合成する予定である。
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