研究課題
まず、線質・線量の両方を測定する輝尽蛍光体の第一案として、BaFBr:Euを定法で作成した。これに対し、蛍光量の波長依存性が照射放射線の線質によってどう変化するかを測定した。照射には、γ線照射として京都大学複合原子力科学研究所のコバルト60γ線照射装置と、中性子(γ線混合)照射として京都大学原子炉重水中性子照射設備の基準混合中性子照射モードをレール治具で用いた。その結果、励起スペクトルでは650nm励起での蛍光量に対する630nm励起での蛍光量の比が、γ線照射で1.5~1.7であるのに対し、中性子照射で1.2~1.4と、それぞれの不確かさ10%程度に対し顕著な違いが見られた。蛍光スペクトルでは、452nm蛍光量に対する418nm蛍光量の比がγ線照射で1.5、中性子照射では1.1と、これも顕著な違いが見られた。なお、BaFBr:Euを輝尽蛍光体として用いる市販のイメージングプレート(富士フィルム社、BAS-TR)では、線質による違いがわずかながら不確かさを越えて見られた。具体的には、励起スペクトルで蛍光量比(532nm励起/650nm励起)および蛍光量比(630nm励起/650nm励起)はγ線照射より中性子照射で7%程度低くなった。このとき、それぞれの不確かさは5%程度であった。蛍光スペクトルでは蛍光量比(346nm/389nm)が、不確かさ4%程度に対して中性子照射で10%高くなった。以上の結果は、輝尽蛍光体BaFBr:Euにより線質を測定できることを示唆するものであった。今後、LETを定量的に変化させた際の蛍光量の蛍光・励起波長依存性の取得を継続するが、第一案としてはBaFBr:Euを用いる場合を想定して、検討を進めることとした。加えて、蛍光の2次元読み出し系の構築を開始した。本予算で波長依存性を取得できるCMOSカメラを導入した。まずは単色光源と合わせて、読み出し系の構築と像読み出しの試行を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した測定がやや遅れているものの、2次元の読み取り装置は計画より進んでおり、総じて、おおむね順調と判断した。
まず軟組織の検出器について、設計と作成・性能評価を行う予定である。並行して、2次元読み取り系の性能評価を行う。
現有の光学部品の併用により、経費を節減できたため。次年度以降の光学部品、計算機に利用する。
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