研究課題/領域番号 |
23K07159
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西 弘大 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (10719496)
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研究分担者 |
工藤 崇 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (20330300)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 放射性ヨウ素 / 体内動態 / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、放射性ヨウ素をはじめとする内部被ばくの原因として懸念されるRIを体内で捕捉・捕集する物質を探索し、見出された候補物質によって体内に侵入したRIの動態がどのように変化するかを小動物用SPECT装置で追跡、画像化、定量化することを目的としている。 初年度は候補物質の探索に重きを置き、様々な物質のヨウ素補足力を検証した。ヨウ素に対して捕捉効果を持つキレートの候補は見つけ出せていないが、いくつかの多糖類がヨウ素を絡め捕るように捕捉することを突き止めた。それらの中から、α-シクロデキストリン(α-cycD)とβ-シクロデキストリン(β-cycD)に着目して、動物実験を行った。 α-cycDは、胃内投与された放射性ヨウ素を抱接することで血中への取り込みを阻害し、長時間にわたって甲状腺移行率を40%低下させた。この研究結果は、申請時の予備実験と合わせてScientific Reports誌(Nishi K, et al. Reduction of thyroid radioactive iodine exposure by oral administration of cyclic oligosaccharides. Sci Rep.13 (1):6979; 2023)に報告した。 一方、β-cycDはα-cycDに比べてヨウ素を保持する力が弱く、胃内投与直後は甲状腺移行率をα-cycDと同等レベルに阻害したが、6時間後には甲状腺にコントロール群と同程度の集積が確認された。β-cycDに抱接されたヨウ素は捕捉と遊離を繰り返していると考えられる。この性質は内部被ばくの防護ではなく、内用療法における放射性ヨウ素の血中濃度コントロールに応用できると予測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射性ヨウ素の捕捉に有用な物質を見出し、基礎的な動物実験の結果も良好であった。防護剤として応用するためのデータはまだ不足しているが、次年度の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
α-cycDおよびβ-cycDで放射性ヨウ素の動態を効率良く制御する条件を検証する。特にα-cycDは原子力災害時の内部被ばく防護剤として利用できる可能性が非常に高いため、摂取可能な量や濃度、さらには摂取方法、摂取時期について動物実験を実施し、人体に安全で必要十分な甲状腺への移行阻害効果が期待できる用法の確立を目指す。 候補物質の探索も計画通り継続する。特にキレート剤や、形状の異なる食物繊維を中心に調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
小動物用SPECT/CTの利用料金が想定よりかからなかった。必要最低限のデータを数回の実験で揃えられた事に加え、初年度は機器メンテナンス期間が長く、追加データを取得する機会がなかったためである。残金は次年度の機器利用料金に充てる予定である。
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