研究課題/領域番号 |
23K07165
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
浅香 智美 東北医科薬科大学, 医学部, 講師 (90555707)
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研究分担者 |
河合 佳子 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (10362112)
林 もゆる 東北医科薬科大学, 医学部, 講師 (60548147)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リンパ管 / 再疎通 / 線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、膝窩リンパ節切除に続く術野への放射線照射後のリンパ管再疎通に、放射線やGata2ヘテロ変異が与える影響を解明し、リンパ管再疎通を改善する因子の解明である。本研究では、病態モデルとしてGata2ヘテロ欠損マウスを用いている。 令和5年度は主に、リンパ浮腫病態モデルの検証として、Gata2ヘテロ欠損マウスにおける真皮の状況を主に電子顕微鏡による観察やElastica-Masson染色、Fibronectin抗体染色など組織学的に評価した。その結果、Gata2ヘテロマウスの真皮においてコラーゲンの蓄積と線維芽細胞数の減少が認められた。Gata2ヘテロ欠損マウスの膝窩リンパ節切除後にアテロコラーゲンを添加し、リンパ管の再疎通が改善されたこと、一方で野生型ではこのコラーゲンの添加が異所性のリンパ管新生をもたらす可能性があることを見出した(学会発表2件、国際雑誌への論文掲載1報)。リンパ管の再疎通に重要な因子がリンパ管内皮細胞に加えて、周辺の線維芽細胞にも存在することを示唆しており、次に放射線影響を考える上で重要な意味を有する。したがって、この成果は、本研究における実施項目の1つリンパ管再疎通におけるGata2の関与において、重要な知見である。 さらに、R5年度には。膝窩リンパ節除去後に、術野周辺のみにX線を照射し、照射後3週間飼育可能な系を確立した。局所性にX線を照射できる系により、全身性の影響や栄養状態などを排除した実験系を構築することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、研究実施項目の1つであるGata2ヘテロマウスの表現型の解析から、リンパ管再疎通に重要な項目の1つとして、Gata2ヘテロマウスにおける線維芽細胞の動態について解析が進み、成果として2回の学会発表に加え、論文投稿、受理まで到達できたこと、またX線照射実験系の確立などは大いに進展している。一方で、in vitroの解析が想定より進んでいないことから全体としては概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、1)令和5年度に引き続き、リンパ管切断部位近辺のリンパ管内皮細胞および線維芽細胞に着目し、通常の状態及びリンパ管再疎通時の遺伝子発現変化をRNAseqにより解析する。Gata2ヘテロ欠損マウスと野生型マウスで実施し、比較する。遺伝子発現解析にあたり、研究を効率よく遂行するため、実験補助として学生を雇用する(1h/日)。2)放射線の照射の影響を検証するために、令和5年度に確立した実験系を用いて、膝窩リンパ節切除時にX線を照射し、3週間飼育した際のリンパ管再疎通について評価する。3)単離培養したマウス線維芽細胞において、放射線の照射後の遺伝子発現変化について、1)及び2)の結果をもとにin vitroでの再現性について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は、主に組織学的解析を行なったこと、論文投稿費用が当初よりも金額が少なかったことから、研究が進展しているにも関わらず次年度使用額が生じた。令和6年度に実施予定の遺伝子解析については、令和5年度の次年度使用額を令和6年度請求額と併せて使用する。令和5年度に進展が少なかった培養細胞での実験についても令和6年度に進める予定であり、こちらの消耗品についても支払いが発生する。令和5年度には、放射線照射実験の系が確立したことから、解析を進めるためにも令和6年度に費用が発生する。さらに、研究の遂行をさらに進めるために、令和6年度には実験補助として学生を雇用するため(1h/日)、人件費の支払いが発生する予定である。また、昨年度の実績から、学会発表と論文投稿費用が発生する。
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