研究課題/領域番号 |
23K07177
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 卓志 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (60444478)
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研究分担者 |
玉利 勇樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20794944)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | BNCT / デュアルエネルギーCT / 水分含有率 / 治療計画 / 中性子輸送計算 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のための線量評価シミュレーションにおいて、体内の原子数密度分布の定量データに基づいた計算手法を確立することである。特に、体内での中性子の挙動を決定付ける水素密度分布データの利用に焦点をあて、近年、放射線治療での活用が期待されているデュアルエネルギーX線CTによる組織分離評価をBNCT線量計算へ適用する方法を提案する。本研究では、CTを用いた水素密度分布や水分/脂肪含有率の定量データ測定評価と、それらを線量計算へ適用する一連のフレームワークを構築するとともに、ファントムを用いた実証実験を通して、手法の有用性を検証する。 本研究では、シングルエネルギーCTの2種類の管電圧を使用する計画である。初年度である2023年度は、当該CT装置の仕様を詳細に調べ、デュアルエネルギーCTの代替として使用する際の課題を明確にした。特に、選択可能な管電圧の範囲が想定よりも小さいことが判明したため、水分/脂肪含有率の定量評価の可能性について検討を進めているところである。平行して、水分含有率の定量データに基づいた線量計算手法の有用性を確かめるため、脳腫瘍に対するBNCTを対象にシミュレーションによる検討を行った。その結果、脳の水分含有率として想定される2%の変動に対して、熱中性子束においては最大5%程度、ガンマ線線量率においては最大2%程度の変動が現れることが明らかとなった。これらの結果をもとに、CTによる計測に必要となる精度について検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である2023年度は、CTの仕様上の課題が明らかになったことに加え、水分/脂肪含有率校正のためのCTファントムの選定に時間を要したことなどにより、十分な実験データを取得することができていない。一方で、2年目以降に計画している線量計算フレームワークの構築に向けて計算機環境の整備を先行して進めた。以上の状況から、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の2年目である2024年度は、水分/脂肪含有率校正のためのCTファントムを作製する。十分な実験データを取得し、それらの解析を行うことで、測定可能範囲と定量精度についての評価を進めていく。並行して、CTを用いて取得した定量画像データからモンテカルロ輸送計算を実行するためのボクセル体系を生成し、対応する物質情報を割り当てるソフトウェアの開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:CT用の水分/脂肪含有率校正ファントムの素材の選定に時間を要し、作製に至らなかったため。また、参加を予定していた国際会議が延期となったため。 使用計画:初年度に使用できなかった物品費については、水分/脂肪含有率校正ファントムの作製に使用する。また、旅費については、国際会議を含む学会への参加のために使用する。2年目に使用を予定していた経費については当初の計画通りに使用する予定である。
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