研究実績の概要 |
NTHiが侵襲性感染症を引き起こす病態の解析としてバイオフィルムに注目して研究を進めている。令和5年度はAuto-inducerとしてトリプトファン合成機構に着目し、trpA,B,C,D,Eの欠損株を作成し、バイオフィルムの形態解析を行った。trpA、trpB欠損株ではbroth cultureでは菌は発育するが、drip flow assayではバイオフィルムの産生をほとんど認めず、trpC,D,E欠損株ではバイオフィルムの形成をplate assayでもdrip flow assayでも確認できた。trp C,D,E欠損株が産生するバイオフィルムの形状としては、表面が均一で約30um程度のバイオフィルムを形成していたが、内部の細菌は生菌よりも死菌が増加していた。また培地にトリプトファンを添加すると、バイオフィルム内の死菌が減少し、生菌の増加を認めていた。このことからやはりトリプトファンがNTHi産生バイオフィルムにおいてauto inducerとして働いている可能性があり、トリプトファン合成系がバイオフィルム内でどのように制御されているのかを明らかにすることが重要であると考えている。またHI1296がコードする分泌型ヌクレアーゼもバイオフィルム維持には重要であることが我々の先行研究でわかっているので、この2つの事象がどの様に関与しているのかを明らかにする必要がある。今後バイオフィルム形成の過程での発現遺伝子の解析を行うため12時間後、24時間後、48時間後、72時間後でバイオフィルム内部の細菌からmRNAを回収しquorum sensing機構の解明につなげたい。
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