研究課題/領域番号 |
23K07254
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
松本 歩 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20458318)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | X染色体の不活性 (XCI) / 出生前診断 / 羊水検査 |
研究実績の概要 |
【概要】哺乳類の雌においては、XY雄との遺伝子量補正をおこなう方法として、2本あるX染色体のどちらか一方のX染色体の不活性(XCI)が細胞ごとにランダムに起こることが知られている。ヒトのX連鎖性潜性遺伝において、ランダムなXCIが成立していれば、キャリア女性は発症を免れるが、正常アレルを乗せたXが選択的に不活化を受けた場合は疾患を発症する。 申請者らは、母子ともに著しいXCIの偏りがあり、Menkes病を発症した症例を経験した。また、羊水から1-2日で充分量のDNA抽出に成功した。本研究は羊水検査実施時期である妊娠15から17週における羊水と生後の臍帯血のXCIの相関を調べる。また、XCIの偏りがみられる症例や、その親子症例などを集積、解析することで、XCIの偏りかかわる因子の解明を目的とする。羊水でのXCI測定が可能になれば、着床前診断が受けられない症例や、既に妊娠した症例などの診断を可能とし、不要な妊娠中断を避けることができる可能性がある。 【結果】①2022年から8例の出生前診断を実施した。罹患例は3例で妊娠中断に至ったのは2例、生存例は男児が1例、女児の出産例が4例で1例は妊娠継続中である。そのうち、1例について羊水、生後の臍帯血でXCIを測定した。2例は検体を集積し、今後測定予定である。②X染色体のメチル化による不活化の極端な偏りのために発症したMenkes病女児例について、その母、祖母を含む3世代の全ゲノムとRNAシークエンシング解析を実施し、X染色体不活化の偏りの原因について解析した。X染色体短腕テロメア近傍のp21-22、X染色体長腕のテロメア近傍のq26-28で組み換えが起こっていたことを明らかにし、同部位にcis-acting genetic factorが存在し、X染色体不活化を増強または抑制する可能性を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文を投稿、成果を公表でき、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
出生前診断関連やそれ以外についても羊水および生後の臍帯血または末梢血を集積していく。そのうえで、①羊水でのXCIと生後の臍帯血または末梢血でのXCIを相関をみる。②XCIが組み換えにより、予想と反対の結果になることをあり得る。このため可能であれば、シングルセル解析により少ない量のRNAでの診断が可能かどうかを検討する。②さらに、偏りの著しい症例や親子例があれば、全ゲノムシークエンスや、RNAシークエンス、メチル化解析を追加して、メチル化に影響を与える因子について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は残っていた試薬等を用いていたため、残額が生じたが、現在サインプルを集積中であり、試薬、外注とも高額であるため、2024年度は予定通り使用の見込みである。
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