研究課題
本研究では主に小児の急性骨髄性白血病(AML)を対象として、日本小児がん研究グループ(JCCG)で実施した臨床研究の再発時検体の収集・網羅的遺伝子解析を行い、その知見を生かして新規治療法を開発することを目指している。検体の収集については、JCCG AML-05臨床試験やAML-12臨床試験の再発時検体を順調に収集できている。まとまった検体数に達した段階で、網羅的遺伝子解析(ターゲットシークエンス、RNAシークエンス)を実施し、既に解析済みの約10例の結果、およびpublic dataと統合して評価する予定である。新規治療法の開発については、研究代表者のグループが、AMLに対し分化誘導作用を有する薬剤として過去に報告したAlbendazole (Br J Haematol, 2021)について、構造が類似した他のベンズイミダゾール系駆虫薬の効果を比較検討した。その結果、Albendazoleと構造が類似した薬剤は、その多くがAML細胞株に対し分化誘導作用を発揮すること、中でもParbendazoleはAlbendazoleより低濃度で有効性を発揮することを明らかにした。また再発AML検体を免疫不全マウスに移植して得られたPDX細胞を用いて、Parbendazoleの効果を検証したところ、in vitro/in vivoでAlbendazoleと比較して高い抗腫瘍効果が発揮された。よって、Parbendazoleは再発AMLに対する治療薬の候補となりうることが示唆された。本成果はCommun Biol誌で発表した。
2: おおむね順調に進展している
JCCG AML-05臨床試験やAML-12臨床試験の再発時検体を順調に収集できている。本研究に使用可能なAMLのゲノム解析結果のpublic dataの抽出も進展している。上述の通り、再発AMLに対する治療薬の候補に関して論文発表を行った。これらは当初の研究計画と大きな相違はないため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
収集できた再発小児AML検体について、ゲノム解析を実施する。その結果を既に実施済みのゲノム解析の結果やpublic dataと統合して解析することで、再発に寄与する新規遺伝子異常を明らかにする。それに引き続き、再発分子メカニズムに基づく治療法開発を進める。
次年度使用額が生じたのは、本年度に予定していたゲノム解析の一部を次年度に行うことになったことが主な理由である。次年度使用額は翌年度分として請求した研究費と合わせて、ゲノム解析や消耗品(試薬、実験器具)の費用、英文校正料、論文投稿料等に使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Communications Biology
巻: 7 ページ: 123
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Cytometry Part A
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