研究課題/領域番号 |
23K07271
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
清水 千草 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70435072)
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研究分担者 |
荒田 晶子 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (00266082)
岡部 明仁 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (10313941)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | グリシン / トランスポーター / 脊髄 |
研究実績の概要 |
胎児は、出生前から粗大な胎動を行うが、出生後に寝返りや歩行、手で道具を使うなどの微細運動を成長とともに獲得する。その鍵となるのが抑制性神経伝達物質グリシンである。なぜならば、グリシン放出に必須であるグリシントランスポーター(GlyT)2、抑制性応答に必要なK+-Cl-共輸送体2(KCC2)、アストロサイトへのグリシンの取り込みに必要なGlyT1のいずれの欠損マウスも運動障害により生後早くに死亡するからである。さらに、グリシンはNMDA受容体に結合し、グルタミン酸の興奮作用を増強する。しかし、グリシンが、運動機能発達にどのような役割を果たすのか未だ不明な点が多い。そこで本研究では、運動情報の出力を担う脊髄前角に着目し、発達に伴い、グリシン神経回路がどのように変化するのかを明らかにし、周産期の運動機能発達とグリシンの関連を解明することを研究目的とした。 グリシン神経伝達に関わる分子の発達変化を免疫組織化学法を用いて検討を行った。その結果、GlyT2をマーカーとして解析したグリシン作動性神経が脊髄前角で形成される以前に、アストロサイトにGlyT1が発現することがわかった。さらに、出生直後の前肢付き脊髄脳幹摘出標本を用いた生理学的手法により、胎動性活動に対しグリシンやGABAの抑制性伝達物質が重要なファクターとなりうることを明らかとした。これらのことから、胎児期の運動機能の発達には、グリシンが重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グリシントランスポーターの免疫組織化学法については概ね終了し、論文執筆へと進めている。第129回日本解剖学会総会・全国学術集会の実行委員長を務めることとなり、研究時間が予想よりも少なくなったため、スライスを用いた研究を十分に進めることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究のさらなる推進のため、1名研究分担者を増員した。3名の研究分担者と密接に連絡をとりつつ、周産期における運動発達のためのグリシンの役割について研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
第129回日本解剖学会総会・全国学術総会の幹事校となり、研究代表者が実行委員長となったため、研究を行う時間が予想よりも大幅に少なくなり、物品購入が減少し、次年度使用額が生じることとなった。次年度は、研究を加速するため研究分担者を1名、増員し、計3名の研究分担者とともに、運動発達におけるグリシンの役割について形態及び生理学など多方面からの研究を推進する。
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