研究課題/領域番号 |
23K07276
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
石塚 喜世伸 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80596560)
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研究分担者 |
神田 祥一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60632651)
三浦 健一郎 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70408483)
田邊 賢司 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (80423341)
白井 陽子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90791343)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 巣状分節性糸球体硬化症 / 腎移植後再発 / 抗nephin抗体 / 血中循環因子 |
研究実績の概要 |
2023年度は、原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の腎移植後再発患者1例の血漿中に認められた、腎糸球体における濾過障壁の主要構成分子であるnephrinに対する自己抗体(抗nephrin抗体)について、ELISAを用いて定量評価法を開発した。さらに、血漿・病理組織を解析し、移植後FSGS再発の病因(血中循環因子)としての抗nephrin抗体の関与について、多施設共同研究を行った。22人の日本人小児腎移植患者(8人の遺伝的FSGS患者と14人の非遺伝性FSGS患者)を対象とした。非遺伝性FSGS患者14人中11人が移植後にFSGSの再発を認めた。ELISAを用いて測定した移植後の再発FSGSにおける抗nephrin抗体の血漿中濃度は、移植前または再発時に中央値899(四分位範囲831、1292) U/mL(カットオフ231 U/mL)と著しく高値であった。再発時の移植腎生検では、nephrinが局在変化し、共局在する点状IgGの沈着を認め、nephrinのチロシンリン酸化のアダプター蛋白であるSrcA発現の増加を認めた。寛解後の移植腎生検では、IgG沈着を認めず、nephrinの局在変化を認めなかった。抗nephrin抗体レベルは、寛解後に測定可能であった5人の患者で中央値155(四分位範囲 53、367) U/mLに低下した。また再発を伴わない非遺伝的FSGS患者および遺伝的FSGS患者では、血漿中の抗nephrin抗体は対照30人の患者と同等であり、移植腎生検ではIgG沈着を認めず、nephrinの局在変化を認めなかった。これらの結果は、血中の抗nephrin抗体が移植後の再発性FSGSの病因に関与する循環因子の候補であり、これがネフリンリン酸化によって媒介される可能性があることを示唆した。上記の知見を日本移植学会、日本小児腎臓病学会で発表し、論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題のうち、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)腎移植後再発症例の血漿および移植腎生検検体を用いた抗nephrin抗体の解析と、血漿中の抗nephrin抗体濃度のELISAを用いた定量的測定法の開発については順調に進んでいる。今後は症例数をさらに増やして、抗nephrin抗体のFSGS腎移植後再発との関連について解析を進める予定である。抗nephrin抗体の定量解析の臨床応用については、FSGS腎移植後再発例における治療前後の測定から、治療の有効性を検証する試みを現在進めている。これらから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
多施設共同研究の体制はすでに構築されており、今後は症例数をさらに増やして、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)腎移植後再発症例の血漿および移植腎生検検体を用いた抗nephrin抗体について、FSGS腎移植後再発との関連について解析を進める予定である。また、多施設共同研究で集積した病理検体について、今後nephrinとendocytosis、exocytosisのマーカーとの関連、細胞骨格を制御するcdc42やRac1などのポドサイト関連分子との関連を解析する予定である。抗nephrin抗体の定量解析の臨床応用については、FSGS腎移植後再発例における治療前後の測定から、治療の有効性を検証する試みを、症例数を増やして行っていく予定である。上記の知見の集積により、患者個々の抗nephrin抗体レベルに応じた移植後FSGS再発の予防および治療法の確立を目指していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
入手予定であった試薬が欠品であり、購入予定が2024年度にずれこんだため、次年度使用額が生じた。
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