研究課題
本研究は、親世代のADHD治療薬服用が子世代の神経・行動学的変化やエピジェネティクスに及ぼす影響を明らかにし、ADHD患者の治療方針、新規治療戦略の構築に寄与することを目的としている。2023年度は親世代へのメチルフェニデート(MPH)投与が、子世代(F1)および孫世代(F2)にADHD様症状を誘発するかを確認した。また、MPHによる次世代ADHD誘発メカニズムについて検討した。離乳期までの発育や発達試験において、F1, F2ともに若干の成長遅延が認められたものの、離乳時には対照群と同等であった。行動試験においては、F1, F2ともに衝動性の増加が認められた。また、F1では長期記憶力の低下が認められた。F1線条体のRNA-seqを行い、922個の発現変動遺伝子(DEGs)を同定した。Metascapeを用いてDEGsリストの濃縮解析を行った結果、Neuronal systemという用語が最も有意に濃縮されていた。また、RT-qPCRの結果、ADHDとの関連が示されているSnap25やSyt1、ADHDの病態に関与するとされるDrd2やComtの発現レベルが変化していることを明らかにした。また、2019年に販売開始されたリスデキサンフェタミン(アンフェタミンのプロドラッグ)の影響を推察するためアンフェタミンの代替薬としてメタンフェタミンを用い、同様の検討を行った。F1、F2ともに離乳期までの発育や発達に重大な影響は認められなかったが、F1では学習・記憶力の低下が認められ、F2雌では衝動性が認められた。現時点では詳細なメカニズムは明らかでないが、当該年度の結果から、再生産期間の男性の継続的なADHD治療薬の使用は、子世代や孫世代の行動や記憶力に悪影響を与える可能性があることが示された。
2: おおむね順調に進展している
申請書において2023年度に実施する予定であったものは概ね実施したため。
今後も研究計画書に従い研究を進めて行く予定である。ただし、精子のエピゲノム解析においては、DNAではなくsmall RNAについても検討することを考えている。
遺伝子解析の費用として使用する予定だった金額を2024年度に繰り越すこととなった。その理由としては、3月上旬に検体を解析に出したが、請求書の発行は4月になると言われたため。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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