研究課題/領域番号 |
23K07329
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 太一 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20422777)
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研究分担者 |
佐藤 義朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院准教授 (30435862)
山本 英範 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80801662)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 平滑筋細胞 / 形質変換 / レーザーマイクロダイセクション / プロテオーム解析 |
研究実績の概要 |
研究代表者はラット肺高血圧モデルにおいて、肺高血圧症の閉塞性病変における平滑筋細胞の形質変換に関与しうる蛋白を、レーザーマイクロダイセクション法により閉塞性病変の組織を選択的に取得して、プロテオーム解析による網羅的探索を行うことで同定することを試みてきた。本研究の目的はこうした先行研究から得られた肺高血圧症の閉塞性病変における平滑筋細胞の形質変換に関与する候補蛋白Xについて、その機能を検証し、機能を抑制する薬剤にて動物モデルで治療効果を検証することである。 閉塞性病変を起こすラットSugen-低酸素モデルはVEGF受容体遮断薬のSugen5416をラットに皮下注後、0.5気圧下で3週間飼育したのちに通常気圧下で飼育することで徐々に閉塞性病変が進行する。研究代表者らはこのうち、雄SDラットに対し、Sugen5416皮下注後3週間の低酸素と5週間(8週モデル)または10週間(13週モデル)の通常気圧下で飼育したラットを作成し、8週モデルの非閉塞性血管と13週モデルの閉塞性病変においてプロテオーム解析で発現に差があり、平滑筋細胞の形質変換に関与する候補蛋白Xを得ていたが、まず免疫染色で実際に非閉塞病変と閉塞性病変での発現が見られるかを確認し、特に閉塞性病変で発現が亢進していることを確認した。この遺伝子を正常肺動脈平滑筋細胞(PASMC)においてsiRNAを用いて抑制すると、細胞増殖能が抑制された。また、臨床でも用いられ、候補蛋白Xの機能を抑制することが報告されている薬剤Yを投与してもPASMCの増殖能は抑制された。さらに13週モデルにおいて8週から13週までPBSを投与した群と薬剤Yを投与した群で比較すると、肺血管における閉塞病変率が薬剤Yの投与群で低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、我々の先行研究で得られたラット肺高血圧モデルにおいて、肺高血圧症の閉塞性病変における平滑筋細胞の形質変換に関与しうる蛋白Xが、実際にsiRNAあるいは蛋白Xの抑制作用を有する薬剤Yで抑制することでPASMCの増殖能が低下することが細胞レベルで確認できると同時に、動物モデルでもこの蛋白の機能を抑制することで閉塞性病変率が低下することが示された。プロテオーム解析だけでは分からなかったこの蛋白Xの機能が明らかになると同時に、閉塞性病変の形成に大きく関与していることが示唆された結果が得られたのみならず、臨床で実際に使われる薬剤Yが治療に応用できる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
現在正常PASMCだけでなく、低酸素刺激PASMCにおいて蛋白Xに対するsiRNA, 薬剤Yを用いることで増殖能にどのような影響を及ぼすかを検討している。また、蛋白Xによる細胞増殖能の増強に関与する蛋白について、蛋白Xの下流で働く可能性があるいくつかの蛋白をPASMCを用いてウェスタンブロットで検証している。また、動物モデルにおいては、13週モデルにおいて8週から13週までPBSを投与した群と薬剤Yを投与した群で蛋白Xの発現にどのような変化が見られるのかを免疫染色で確認している。さらに、このモデルにおける肺組織において細胞増殖マーカーによる評価とアポトーシスが関与しているかについても検証中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では当初はまず肺動脈平滑筋細胞を用いた検証を行った上で、動物モデルでの検証を令和7年度に行う予定でいた。しかしながら、肺動脈平滑筋細胞での増殖能評価が想定以上に仮説に合致した結果だったため、動物実験での検証を先行して行う方が良いと判断し、行う実験の順序を当初予定から変更した。そのために次年度使用額が生じることとなった。
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