研究課題/領域番号 |
23K07342
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
神保 恵理子 (藤田恵理子) 自治医科大学, 医学部, 講師 (20291651)
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研究分担者 |
桃井 隆 東京医科大学, 医学部, 客員教授 (40143507)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Foxp2 / 神経分化 / Autism |
研究実績の概要 |
延髄の孤束核に繋がる迷走神経は、腸管神経系(ENS)を統括し、腸機能を制御する。近年、中枢神経系(CNS)等の情報統合による脳腸軸(Brain-Gut Axis)の異常と自閉性障害や統合失調症等や腸管免疫との関連が示唆された。しかし、Brain-Gut Axis形成の分子機構は、未だ不明な点が多い。我々は、ヒト言語障害の原因である転写因子FOXP2変異に対応するR552H変異(転写活性なし)マウスを作製した。ホモマウスでは、超音波音声障害や運動障害、脳(大脳皮質、視床、小脳)の異常と共に胃腸の壊死が見られ、離乳前後で死亡する。本研究では、Foxp2(R552H)変異マウスにおける 腸形成異常の分子機構の解析を通して、Brain-gut Axis形成におけるFoxp2の機能を明らかにすることを目的としている。Foxp2変異ホモマウスでは、胃腸の発達不全が見られ、胎生期12-16日目では、胃特異的でありWNTシグナルに影響を与えるBarx1の減少、ヒルシュスプルング病(HSCR)の原因遺伝子Retの発現低下が見られた。また、Foxp2変異マウスとpFoxp2-mCherry-Tgとの交配により得られた生後約3週のFoxp2変異ホモマウス/ pFoxp2-mCherry-TgではE-cadherin抗体陽性領域の低下、alpha-smooth muscle抗体陽性領域である平滑筋の異常が表れ、胃上皮層および筋肉層の低形成が明らかになった。また、Foxp2変異マウス腸幹細胞を用いて、生理的状況を反映したin vitroモデルである3D培養を行ったところ、野生型と比較して小さな腸オルガノイドが得られた。解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Foxp2正常、変異マウス胎生(9.5-14.5日)の発達過程に発現する遺伝子について領域、時間軸での解析を行うにあたり、対象個体数が得られなかったものの、Foxp2変異マウス由来の腸オルガノイドを作製できた点は評価できることから。
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今後の研究の推進方策 |
1) Foxp2変異マウスNCCおよびVNCC、ENCの特徴についての解析;胃腸形成におけるFoxp2が発現制御する遺伝子の解析Foxp2正常、変異マウス胎生(9.5-14.5日)の発達過程に発現する遺伝子を領域、時間軸でのRNA解析により抽出し、特異的抗体による免疫染色を行う。pFoxp2-mCherry-Tgとの交配によりFoxp2正常、変異マウス胎生時のmCherryの発現を指標として、実体蛍光顕微鏡やセルソーターによりNCCを分離し、神経細胞に分化させる。これらの細胞をRNA解析、各神経マーカー特異的抗体を用いた免疫染色法で調べる。 2) 蛍光蛋白質を標識としたNCCの消化管への移動、分化の追跡;Foxp2正常、変異マウス胎児個体を、RetまたはPhox2B(HSCRの原因遺伝子)の抗体を用い、Whole mountおよび切片の免疫染色により、解析する。 3) 機能的神経系を有する胃腸オルガノイドの作製と解析;病理および可視化解析を行い、消化器官組織における、Foxp2関連遺伝子によるNCC、VNCCの増殖、移動、ENC分化の分子機構を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの対象個体数が十分に得られなかったため、これらを解析するための費用の支出が次年度に延期されたことから。
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