研究課題/領域番号 |
23K07353
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
丹尾 幸樹 金沢大学, 附属病院, 助教 (80807397)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 癌幹細胞 / 腫瘍微小環境 / CXCR2 |
研究実績の概要 |
肝細胞癌には癌幹細胞が構築する多様な腫瘍微小環境社会が存在すると考えられており、癌幹細胞の多様性同様に腫瘍微小環境の多様性を解明する事が最適な治療法の確立に必要である。我々は最近、肝細胞癌患者末梢血において特異的に増加する細胞集団内に、癌免疫療法の治療標的分子として近年注目されているCXCR2を高発現する細胞集団が存在する事を見出した。そこで本研究では、新たな空間情報解析手法を用いて肝細胞癌の多様な腫瘍微小環境における癌幹細胞とCXCR2陽性細胞の細胞間相互作用に解析ならびに腫瘍免疫寛容におけるCXCR2陽性細胞の役割を解明し、CXCR2を標的とした最適な複合癌免疫療法の開発を行うことを目的とした。 本年度は、肝細胞癌末梢血ならびに切除検体組織中のCXCR2陽性細胞割合による臨床病理背景との相関、予後・治療効果予測を行った。まず、ソラフェニブ治療を行った45例の肝細胞癌患者末梢血のフローサイトメトリー解析から循環血液細胞中のCXCR2陽性細胞割合を算出し、CXCR2陽性細胞割合と患者予後との相関を解析した。その結果、CXCR2陽性細胞割合は患者予後(PFS、OS)との有意な相関関係は見られなかった。また、CXCR2陽性細胞割合は臨床病理背景や奏功性とも相関は見られなかった。次に50例の肝細胞癌切除標本を用いてCXCR2の染色を行い、CXCR2発現から高発現群と低発現群に分類し2群における予後との相関を解析した。その結果、OSには差が見られなかった一方、CXCR2高発現群でRFSが長い傾向にあった(P=0.0995)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肝細胞癌末梢血ならびに切除検体組織中のCXCR2陽性細胞割合による臨床病理背景との相関、予後・治療効果予測を実施したものの、CXCR2の臨床的意義に関して十分に解析できていない。
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今後の研究の推進方策 |
切除標本中のCXCR2発現細胞は腫瘍内と腫瘍境界では分布が異なっており、それぞれの発現の臨床的意義を明らかにする。さらに、シングルセル空間情報解析を用いて肝癌幹細胞とCXCR2陽性間質細胞の細胞間相互作用を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画に比べ実際の研究遂行に遅れが生じており、研究を遂行するための費用として次年度使用額が生じた。さらに、研究成果を取りまとめて学会や論文に報告するための資金としても使用する予定である。
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