研究課題/領域番号 |
23K07390
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 淳 東北大学, 大学病院, 講師 (60455821)
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研究分担者 |
二宮 匡史 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (70583938)
佐野 晃俊 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (20906060) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | HBV / ミトコンドリア / MxB / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)の制御のためにミトコンドリアを介した自然免疫が果たす役割を明らかにし、病態進展を抑制できる標的を明らかにするため、初年度の2023年度はミトコンドリアに存在することが報告されているIFN誘導性遺伝子のMxBに着目して研究を進めた。MxBをノックダウンすることにより培養肝細胞のミトコンドリアの形態が大きく変化し、膨化・断片化することが確認された。HBV発現細胞を用いてMxBのノックダウンを行うとエンベロープタンパクのL/M/SHBsの発現量およびHBV発現細胞から放出されるHBsAgが有意に増加しており、エンベロープを伴うHBV粒子も増加していたことから、MxBは主にエンベロープタンパク発現抑制によりHBV複製を制御する働きがあると考えられた。HepAD38細胞を用いてpoly(I:C)刺激後のRIG-I下流のシグナルの変化を比較すると、MxBノックダウン後にはTBK1、IRF3のリン酸化が抑制されていた。この経路に必要とされるミトコンドリア上でのMAVSのクラスター形成を観察すると、MxBのノックダウンにより形成が抑制されていた。また、その下流のIFN発現についてmRNA定量により比較すると、poly(I:C)により8時間後に著明に上昇したIFNL1、IFNL2/3がMxBノックダウンにより有意に抑制されていた。MxBはRIG-I下流の効率的なシグナル伝達に必要であることが示唆され、ミトコンドリア上のMAVSのクラスター形成の促進に関与していると考えられた。B型慢性肝炎患者の肝組織を用いた検討ではC型慢性肝炎と比較してMxBの発現が低く、HBV感染ではMxBが十分誘導されていない可能性が示唆された。次年度はMxBの誘導によるHBV制御の可能性についてさらなる検討を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に予定していたミトコンドリア上のタンパク質の網羅的な解析は進んでいないものの、MxBのノックダウンによりミトコンドリアの形態が大きく変化することが分かり、自然免疫シグナルの変化も明らかにすることができた。また、2024年度に予定していた患者肝組織を用いた検討については前倒しで施行できており、全体の進捗としてはおおむね順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では2024年度はHBVに対する自然免疫応答の抑制を解除する化合物の探索を予定していたが、MxBに関する有望な結果が得られており、こちらに焦点を当てて治療応用の可能性を探索していく。また、すでに開始している患者肝組織を用いた検討についてはさらに検体を増やして解析を進める。予定していたHBV関連肝癌とミトコンドリアの関連については順次開始し2025年度にかけて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも試薬購入が少なくなったため残額が少し生じたが、そちらは次年度の試薬購入費に充てる。
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