研究課題/領域番号 |
23K07487
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林田 健太郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20383862)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大動脈弁狭窄症 |
研究実績の概要 |
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は、重症大動脈弁狭窄症に対する治療法として急速に普及してきており、外科的大動脈弁置換術と並んで標準治療となっている。TAVIは急速にその症例数が増加しているが、デバイスがいまだ比較的高価であることもあり、その適応判断に関しては施設間格差が存在する可能性があり、「適切化」および「標準化」が課題となっている。私は多施設前向きTAVIレジストリ(OCEAN-TAVI)を代表者として運営しており、本研究では、TAVIの「適切化」および「標準化」を目指し、臨床的側面、また医療経済的側面両方から見た本邦の現状を反映させた「適応適切性基準」に同レジストリを当てはめることで、本邦で施行されているTAVIがどの程度において適切な適応で施行されているのかを定量的に検証し、「標準化」に向けて改善すべき課題を明確化する。 現在日本版TAVI適応適切性基準に基づいた適切性評価や質問紙票を用いたQOL評価を行っていく。 日本版TAVI適応適切性基準に基づいた適切性評価:申請者が中心となって策定した日本版TAVI適応適切性基準に、OCEAN-TAVI当てはめることで 、本邦におけるTAVIの適応適切性の現状を検証し、適切でないと評価される症例の割合と特徴を明らかにする。さらに臨床的アウトカムデータと突合することで、TAVI施行が適切であると評価される症例および適切でないと評価される症例を、長期的な臨床アウトカムおよびQOLの観点から比較する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在はTAVIデータベースの構築とデータの蓄積を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
質問紙票を用いたQOL評価:費用対効果分析において重要な情報となるQOLの定量的評価にはEQ-5D(EuroQol 5 Dimension)およびカンザスシティー心筋症質問票(KCCQ)を用いる。EQ-5Dは簡易に測定できるQOLの尺度として幅広く用いられている調査票で、5項目(移動の程度、身の回りの管理、ふだんの生活、痛み・不快感、不安・ふさぎ込み)からなる3段階選択式回答法とVAS(Visual Analogue Scale)による患者の健康 状態の自己評価により構成されている。KCCQは、もともと心不全 患者のQOLを評価するために開発された23項目からなるアンケートであるが、大動脈弁狭窄症患者に対しても正確に評価できることが証明されている。身体機能、症状、社会的機能、及び生活の質の各領域から要約スコアの点数で算出し、QOLを定量的に評価する。要約スコアは点数が 高いほどより良い健康状態を表す。 本研究においては、TAVI施行術前および術後1年の時点でEQ-5DおよびKCCQの評価を行う。その後、各患者において術前と術後1年でのKCCQを比較し、重回帰分析を用いることによりKCCQの改 善に関連した因子の同定を行う。 TAVIにおける費用対効果についての検証:本研究に使用されるデータベースに関しては、各施設で費用データ(DPCデータ)と結合することで 費用対効果の検証が可能である。具体的には、EQ-5DあるいはKCCQから得られたQOLデータと費用データ、さらにOCEAN-TAVIから得られる臨床ア ウトカム情報を用いることで、質調整生存年(QALY: Quality-adjusted life years)および増分費用効果費(ICER: Incremental cost-effect iveness ratio)を算出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費については、現在主にデータベース構築のための人件費で使用している。また諸経費を引いても少額の繰越金が残存した。現在もデータの取得を行なっている最中である。そちらにつき、継続的に費用が生じてくる予定であるため、今年度繰り越した金額については次年度と併せて使用していく予定である。
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