研究課題
【心筋症モデル動物におけるミトコンドリア形態と機能解析】正常および遺伝子改変筋ジストロフィーモデルラットにおいて心臓、骨格筋を摘出し、電子顕微鏡による細胞膜およびミトコンドリアの形態観察を行ったところ、正常ラットでは心筋、骨格筋細胞における細胞膜構造が保たれていたが遺伝子改変筋ジストロフィーモデルラットでは細胞膜断裂、基底膜の肥厚が多く観察された。ミトコンドリアの数やクリステ変化などは正常ラットに比して明らかではなかった。今後、呼吸鎖酵素複合体に対する抗体を用いた免疫染色を用いた解析を行う予定。【ヒト心筋症におけるミトコンドリア形態と機能、心筋エネルギー代謝の解析】小児重症心不全の4例においてミトコンドリア関連遺伝子異常を認めた。うち1例に対して表現型が極めて重症であったためスプライシング異常を疑い、cDNA解析およびminiGene解析によってエキソンスキッピングにより複数のアイソフォームが存在した他にスプライシング異常も認め、心不全重症化の原因として症例報告した。ミトコンドリア機能異常に基づいてビタミンカクテル療法を導入したところ心不全は徐々に改善し、現在心不全症状なく経過観察が可能となっている。ミトコンドリアDNA異常を認めた小児心筋症に対して心筋生検を施行し、ミトコンドリア形態異常、ミトコンドリア体積密度の増加、およびクリステの変性を認め、呼吸鎖酵素複合体に対する抗体を用いた免疫染色で染色性の低下を認めた。SGLT2阻害薬によるケトン体産生および心筋での利用促進を目指した治療を行っており、有効であれば今後ミトコンドリア心筋症においての治療の選択肢として考えられる。
2: おおむね順調に進展している
動物実験は当初の予定通りである。心筋を用いたメタボロームアッセイについては検体数が集まった時点で検討する必要があり、まだ十分なサンプル数に達していないため保留としている。一方で中鎖脂肪酸含有ミルクなどによる心不全栄養療法は開始しており、その効果について検証可能であると思われる。
二次性心筋症モデル動物における心筋、骨格筋組織の電子顕微鏡像におけるミトコンドリア形態の観察を行う。また凍結保存している心筋、骨格筋を組織を用いてメタボローム解析を行うことで不全心筋におけるエネルギー代謝の特徴について明らかにする。
今年度はメタボローム解析を行うための検体数が足りなかったため、発注をしなかったことで余剰金が生じており、次年度以降に同解析を行うための繰越金としている。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
Pediatr Int.
巻: 65 ページ: e15571
10.1111/ped.15571
Mol Genet Genomic Med.
巻: 11 ページ: e2190
10.1002/mgg3.2190
Eur Heart J Case Rep.
巻: 7 ページ: 01
10.1093/ehjcr/ytad509
Int J Cardiovasc Imaging.
巻: 39 ページ: 1133-1142
10.1007/s10554-023-02825-x