研究課題
心不全患者のうつ状態合併率は高く、うつ状態は心不全患者の予後や生活の質の悪化と強い関連があるものの、うつ状態と心不全重症化を結びつける分子メカニズムは不明である。近年、うつ病患者における血中phosphoethanolamine(PEA)濃度の低下が報告されるなど、うつ状態における神経体液性因子や代謝物質の動態に関する報告はあるが、うつ状態と心不全との関連を解明する視点から検討された報告はない。我々が行ったpilot研究では、うつ状態を併発していない心不全患者に比し、うつ状態合併心不全患者において血中PEA濃度が上昇する傾向が認められるなど、うつ状態と代謝物資の関係は非心不全下と心不全存在下では異なることが示唆された。そこで、本研究では心不全患者の血漿を用いてメタボローム解析を行い、心不全とうつ状態を結びつける因子を見出し、当該因子が心不全の重症度や予後に与える影響、当該因子が心不全患者のうつの重症度に与える影響を検討する。最終的には、基礎研究および前向き介入研究に結び付け、うつ状態の心不全患者に対する新規治療戦略の構築に寄与することを目指す。令和5年度は、心不全患者50名の血液サンプルを得てメタボローム解析を行い、そのデータを分析中である。50名の患者の平均年齢は71歳、男性が62%を占め、虚血性心疾患患者が38%である。平均の左室駆出率は42%。PHQ-9スコアの平均は5.8点であり、4点以下が24名、5~9点が19名、10~14点が4名、15点以上が3名という内訳であり、うつの程度として中等度以上が7名を占めることになる。まずは、これらの患者から得られたデータを分析したのち、今後のデータ収集の方向性について見直しの要否を検討する。
2: おおむね順調に進展している
すでに50例の症例のサンプルを用いてメタボローム解析を行い、現在、解析データの分析作業を進めているため。
今後も、このペースで研究計画を遂行する予定である
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