研究課題/領域番号 |
23K07524
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
猪又 孝元 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20311954)
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研究分担者 |
奥田 修二郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00512310)
柏村 健 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (70419290)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 心筋生検 / 心不全 / 人工知能 |
研究実績の概要 |
一部の治療により心機能が改善する現象が観察され、左室逆リモデリング(LVRR)と呼ばれる。LVRRは、予後の改善をもたらすかの先を読む指標として注目されている。LVRRは、個別化という新たな心不全治療戦略の主軸となり、これを予見する事前情報として心筋病理と心臓イメージングの有用性を報告してきた。しかし、その読影は人間の眼で判断される職人技との現状が未だ長く続いている。しかも、心臓領域では専門家や対応施設が少なく、普及や標準化の大きな妨げになっている。ヒトや場所を選ばず、判断がバラつかない方法論として、人工知能(AI)による画像読影がLVRR予見を通じて心不全患者の「これから」を診断し、最終的に人為的な診断バイアスを生まない統合的な心不全予後予測システムを確立することを研究目的とする。 2012-20年に新潟大学医歯学総合病院にて心筋生検が行われた拡張型心筋症(DCM)の連続337症例を用い、心筋生検のヘマトキシリンエオジン染色標本を、光学顕微鏡を用いたTIFFデータもしくはバーチャルスライドにより画像データ化し、convolutional neural network (CNN)モデル作成を試みている。心筋生検のAI診断システムが確立できた時点で、同じ対象例において心筋生検と同時期に行われたGd造影心臓MRI画像をデータ取得し、AIによるLVRRおよび心血管予後の診断精度を検証する。そして最終的には、統合臨床指標を用いたAI診断の前向き多施設共同研究へと発展させる。すなわち、他の臨床データと合わせ、AIによるLVRRおよび心血管予後の診断精度を検証し、心不全予後に繋がる診断アルゴリズム確立を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、繰り返しAI診断の精度管理の検証を行った。患者背景のばらつきを抑えたDCM91症例をLVRRの有無にて半数づつに群別化し、予備調査と同一の方法論で検討を進めた。しかしながら、学習データではaccuracyが高いが、評価データでは正解率が低いといったoverfittingから脱却できていない。すなわち、本研究開始前に行った24例での予備調査(validation accuracy 0.8924)を上回る高精度を得られず、あらためて診断アルゴリズムの設定調整を行う必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度はまず、用いる画像データの条件(画像の倍率や組織の選定)や画像処理(色調調整)を修正のうえ精度向上が得られないかを追加検証する。そのうえで、DCMの連続200症例をあらたに登録し、設定したアルゴリズムへ組込み、再現性を検証する。令和7年度は、統合臨床指標を用いたAI診断の後ろ向き研究を組み、ベースラインとして心筋生検に加え心臓MRIが施行され、同時期の血液データ、心電図、心エコー図の各種データと1年後の左室逆リモデリング(LVRR)との関連を検証し、心筋生検AI診断によるLVRR予測能について得られた結果を取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は心筋生検AI診断でaccuracyの高い精度管理法が確立できなかったため、令和6年度はまずAI診断法の検討に注力する。引き続き行う予定であった心筋生検標本の特殊染色や心臓MRIを含めた他の臨床データ取り込みなどの作業は令和6年度へスライドさせ、AIによるLVRRおよび心血管予後の診断精度を検証するための予算移行を行うこととする。
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