研究課題/領域番号 |
23K07546
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
倉林 正彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 名誉教授 (00215047)
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研究分担者 |
小保方 優 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (10746770)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | SGLT2 / エネルギー代謝 / 骨格筋 / AMPK |
研究実績の概要 |
エンパグリフロジンがもつ、運動耐容能の改善作用の少なくとも一部はケトン体によってもたらされる可能性を考え、エンパグリフロジンが骨格筋(速筋)の代謝関連遺伝子の発現に与える影響を検討した。【方法】マウスにエンパグリフロジン(10mg/kg/day)または生食を4週間投与し、大腿四頭筋における遺伝子発現をqPCRにて解析した。【結果】エンパグリフロジン群でエネルギーセンサーの鍵分子であるAMP-activated protein kinase (AMPK)およびnicotinamide phosphoribosyltransferase (NAMPT)の遺伝子発現が有意に増加した。転写コアクチベーターPGC-1aの発現レベルも増加した。また、核内受容体PPARa, PPARaおよびSRFのコアクチベーターmyocardinの発現レベルも増加し、さらに、これらの発現レベルは 脂肪酸酸化や電子伝達系の酵素遺伝子、酸化ストレス応答関連遺伝子および遅筋筋線維遺伝子の発現レベルと有意に相関することが明らかになった。【意義と重要性】本研究は心不全と骨格筋機能との間の交絡因子を排除するために正常マウスを用いた。これまで、SGLT2阻害薬は、糖喪失を介して組織エネルギー枯渇を引き起こし、ケトン体産生増加、心筋細胞におけるマイトファジー亢進、ミトコンドリア産生、酸化的リン酸化、抗炎症のメカニズムが誘導されることが提唱されている。これまで、骨格筋での代謝遺伝子発現は運動、空腹などによって発現が誘導されることが明らかにされていることから、エンパグリフロジンによって引き起こされる骨格筋での栄養状態の変化がこの遺伝子群の発現を誘導している可能性がある。遺伝子発現誘導のメカニズムに関してはいまだ不明であるが骨格筋でのAMPKの発現増加はエンパグリフロジンによる運動能の増加に関連するかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エンパグリフロジンが骨格筋遺伝子の発現に与える影響を網羅的に検討している。エネルギー代謝関連の遺伝子発現が有意に増加するとの発見は当初の仮説に合致している。ケトン体が関与しているかの研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
エンパグリフロジン投与マウスの代謝臓器(肝臓、腎臓、心筋、骨格筋)において網羅的に遺伝子発現を解析する。我々の実験条件ではエンパグリフロジンは体重の変化をきたさない。つまり、エンパグリフロジンによって惹起される遺伝子発現の変化はエネルギー喪失によってもたらされるものではないと推測される。代謝臓器毎でどのような遺伝子発現の変化が起こるのかを解析し、シグナリングメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載費を他の外部資金を用いて支払ったこと、およびin vitroの実験系の準備において当初予定していた抗体や細胞培養に要する金額が安価であったことから、繰越し金が発生した。
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