研究課題/領域番号 |
23K07553
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
岡本 貴行 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (30378286)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 血管壁硬化 / メカノトランスダクション / 炎症 / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
動脈硬化には炎症を中心としたアテローム性硬化とリモデリングによる動脈壁硬化の2種類の病態が存在し、これらの病態は相互に活性化している可能性がある。我々は動脈壁硬化が血管内皮細胞の炎症や血液凝固を活性化すると仮説を立てその検証を進めている。我々はKruppel-like factor 2(KLF2)が柔らかい基質で誘導される可能性を見出した。本研究では、この経路の分子実態を明確化し、制御することで血管内皮細胞の炎症や機能障害が改善するか検証を行うことを目的とする。 初年度では、2, 8, 64kPaの硬さのゲル上で不死化大動脈血管内皮細胞を培養し、腫瘍壊死因子(TNF-α)刺激を加えて遺伝子の発現を比較検討した。その結果、柔らかい基質でKLF2の発現増加が観察され、その下流の遺伝子である抗血液凝固因子のトロンボモジュリンの発現が増加した。また、TNF-α刺激でKLF2とトロンボモジュリンの発現は顕著に低下すること、および炎症性サイトカインの発現が増加することを定量的PCR法で明らかにした。次に炎症刺激時の細胞を用いてKLF2の上流の転写制御因子のmyocyte enhancer factor 2C (MEF2C)の細胞内局在を調べ、核内に移行することを示す結果を得た。 以上の結果から、MEF2C-KLF2経路が細胞外環境の硬さに応じて負に制御され、血管内皮細胞を向炎症性や向血液凝固性に誘導する可能性が示された。次年度では、細胞の機能変化を解析しつつ、これらをトリガーする因子の同定を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA-seq解析による結果を定量的PCR法でも解析し、軟らかい基質上でのKLF2の発現増加が確認できた。また、本経路が既知のYAP経路と独立して制御されていることを示す結果も出ており、本研究課題は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、MEF2C-KLF2経路が細胞外環境の硬さに応じて制御される可能性を見出した。次年度移行では、本経路を調節する仕組みの全容を明らかにし、その病態生理的役割を明らかにしていく予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿に伴う校正時の際の英文校正、追加実験等の費用として確保したが、査読結果が4月以降となり、次年度使用額が生じた。 本使用額は次年度に英文校正、追加実験の費用として使用する予定である。
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