研究実績の概要 |
マウス脂肪組織由来幹細胞(ADRC)に凍結融解を3回繰り返し、融解した上清は0.20μmのセルロースアセテートを用いて、シリンジフィルターにて濾過を行うことで、脂肪組織由来幹細胞濾液(F-ADRCL)を作成した。マウス創傷治癒モデルを用いて、F-ADRCLの効果をADRCやADRC上清液と比較した。C57BL6マウスに、皮膚パンチを用いて背部に直径8mmの皮膚全層欠損の傷を作成し、F-ADRCL等を投与し、被覆フィルムにて創部とその周囲を被覆した。コントロールとADRC, ADRC上清液, F-ADRCLにて比較検討を行った。コントロールと比し、ADRC, ADRC上清液, F-ADRC いずれも、術後3, 7,14日目の創傷治癒が有意に促進した。特に、F-ADRCは最も強力な創傷治癒効果を示した。そこで、F-ADRCの創傷治癒効果の機序をin vitroの系にて検討を行った。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と線維芽細胞(Normal Human Dermal Fibroblasts)を用いて、F-ADRCLの管腔形成能やコラーゲン産生に対する効果を検討した。1x105個のADRCからF-ADRCLを作成し、HUVECに添加し、tube formation assayを行なった。また、線維芽細胞にも同様にF-ADRCLを添加し、collagen type1の産生量を測定した。F-ADRCLの添加でcontrolと比較し、有意に管腔形成の増加を認めた。線維芽細胞へのF-ADRCLの添加で、有意にcollagen type 1の産生量が増加した。このように、F-ADRCLは、強力な創傷治癒効果を発揮し、その機序として創部周囲の血管新生増加やコラーゲン産生能増加が関与していると考えられた。
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